歌うときに肩や首に力が入るとき。力を抜くための練習と、ふだんの姿勢
「歌っていると、いつのまにか肩が上がっている」 「高いところになると、首にすじが立つほど力が入ってしまう」
歌の練習をしていると、こんななやみを持つ方は少なくありません。先生から「肩の力を抜いて」「首に力が入っているよ」と言われても、どうすれば抜けるのか、わからないこともありますよね。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、歌うときに肩や首に力が入ってしまうときの、力を抜くための練習にしぼってお話しします。どうして力が入るのか、どんな練習をすればよいのか、ふだんの姿勢で気をつけたいことを、順番にまとめました。大人の方にも、お子様にも使える内容です。
歌うと肩や首に力が入るのは、なぜ?
「がんばろう」とするほど、体はかたくなる
大きな声を出そう、高い声を出そうとすると、体は自然と「がんばる」形になります。そのとき、肩を持ち上げたり、首をつき出したりして、声をしぼり出そうとしてしまうことがあります。
これは、多くの方に見られることです。わるいくせというより、「声を出そうとする気持ちが強い」しるしだと考えてみてください。
息を、肩ですおうとしている
歌う前に大きく息をすおうとして、肩がぐっと上がる方がいます。肩を上げてすう息は、胸の上のほうにしか入りにくく、すぐになくなってしまいます。息が足りなくなると、のどや首でなんとか声を出そうとして、さらに力が入ってしまいます。
高い音や、長い音でかたくなる
ふだんは平気でも、高い音や長くのばす音のところだけ、首に力が入るという方も多いです。「出るかな」という不安が、体をかたくさせていることもあります。
緊張や、ふだんの姿勢のくせ
本番で緊張したときや、人前で歌うときにも、肩や首はかたくなりやすいものです。また、スマホやパソコンを長く使って、首が前に出たまま、肩がまるまったままになっていると、歌うときにもそのくせが出やすくなります。
力が入っているか、たしかめてみよう
鏡の前で歌ってみる
まずは、鏡の前で歌ってみましょう。正面だけでなく、横からも見てみると、気づきやすくなります。
- 息をすうときに、肩が上がっていないか
- 高いところで、あごが前につき出ていないか
- 首のすじが、くっきり見えていないか
- 歌いおわったあと、肩がこったように感じないか
動画にとって、見返してみる
スマホで歌っているところをとって見返すのも、よい方法です。歌っているときは気づかなくても、あとから見ると「こんなに肩が上がっていたんだ」とわかることがあります。
ひとつでも当てはまったら、これからお話しする練習をためしてみてください。
肩の力を抜く練習
肩を上げて、すとんと落とす
いちばんかんたんで、すぐにできる練習です。
- 両肩を、耳に近づけるように、ぐっと持ち上げる
- そのまま3つ数える
- 息をはきながら、肩をすとんと落とす
これを3回くらいくり返します。わざと力を入れてから抜くことで、「力が抜けた感じ」がわかりやすくなります。
肩をゆっくり回す
両肩を、前から後ろへ、ゆっくり大きく回します。5回くらい回したら、今度は後ろから前へ回してみましょう。いそがずに、ゆっくり動かすのがコツです。
両手をぶらぶらさせる
立ったまま、両うでを体の横にたらし、手首から先をぶらぶらとふります。うでと肩のあいだの力が、だんだんゆるんでいくのを感じてみてください。
首の力を抜く練習
首を、ゆっくりたおす
首の練習は、とくにやさしく行いましょう。
- 頭を右にゆっくりたおして、3つ数える
- まん中にもどす
- 左にゆっくりたおして、3つ数える
- 前にうつむいて、首の後ろがのびるのを感じる
首をぐるぐる大きく回したり、勢いをつけて動かしたりするのは、さけてください。痛みを感じたら、すぐにやめましょう。
「うなずく」「首をふる」を小さく
声を出しながら、小さくうなずいたり、ゆっくり首を左右にふったりしてみましょう。「あー」と声をのばしながら首を動かしてみて、声がかたくならなければ、首に力が入っていないしるしです。
首を動かすと声がとぎれる、ゆれるという方は、首で声をささえている可能性があります。
あごをひきすぎない、つき出さない
首の力は、あごの位置とも関係しています。あごをつき出すと首の前がのび、あごをひきすぎると首の後ろがつまります。顔をまっすぐ前に向けて、目線を少し遠くにおくくらいが、らくな位置です。あごまわりの力の抜き方は、こちらの記事でくわしくまとめています。歌うときにあごに力が入るとき。あごの力を抜いて、らくに口をあける練習
息のすい方を見直す
肩を上げずに、おなかまわりで息をすう
肩や首の力を抜くためには、息のすい方がとても大切です。
- 片手をおなかに、もう片方の手を胸の上におく
- 鼻からゆっくり息をすう
- 胸の手はあまり動かさず、おなかの手がふくらむのを感じる
- 口から「スー」と細く長く息をはく
このとき、肩が上がっていないか、鏡でたしかめながら行いましょう。息のすい方については、こちらの記事でもくわしくお話ししています。歌の腹式呼吸のやり方。子どもにも大人にもわかる、やさしい練習
すいすぎない
「たくさんすわなきゃ」と思うと、肩に力が入ります。息は、ぎゅうぎゅうにつめこまなくてもだいじょうぶです。8分目くらいをイメージすると、体がかたくなりにくくなります。
歌いながら力を抜く工夫
ハミングから歌いはじめる
いきなり歌うのではなく、口をとじて「んー」とハミングしてから歌うと、のどや首の力が入りにくくなります。ハミングで力が抜けた感じをつかんでから、そのまま歌詞で歌ってみましょう。
高いところは、小さめの声で練習する
首に力が入りやすい高いところは、まず小さめの声で、ゆっくり練習してみましょう。小さな声でらくに出せるようになってから、少しずつ声を大きくしていくと、むりがありません。
高さがどうしてもくるしい曲は、高さを少し下げて練習するのもひとつの方法です。
歌いながら、体を少し動かす
歌いながら、ひざを少しまげのばししたり、体を左右にゆらしたりしてみましょう。体がかたまりにくくなり、肩や首の力もぬけやすくなります。
手のひらを、上に向ける
歌うときに、両手のひらを上に向けて、体の前でかるくひらいてみてください。手をにぎっていると肩までかたくなりやすいですが、手をひらくと、肩のあたりがゆるみやすくなります。
ふだんの姿勢で気をつけたいこと
立ち方をととのえる
歌うときの立ち方は、肩や首の力と深くつながっています。
- 足は、こしはばくらいにひらく
- ひざを、ピンとのばしすぎない
- 頭のてっぺんから、糸で上にひっぱられているイメージ
- 肩は、うしろにひきすぎず、自然に下ろす
「よい姿勢にしよう」とがんばりすぎると、かえって体がかたくなります。「らくにまっすぐ立つ」くらいの気持ちで十分です。
スマホやパソコンのあとは、体をほぐす
ふだんから首が前に出ていると、歌うときにもその形のままになりやすいです。スマホやパソコンを使ったあとは、肩を回したり、首をやさしくのばしたりして、体をほぐす時間をつくりましょう。
お子様に伝えるときは
お子様が歌うときに肩が上がっていても、「力を入れちゃだめ」と言うと、かえってかたくなってしまうことがあります。
- 「肩をすとんしてみよう」
- 「くまさんみたいに、ゆらゆらしてみよう」
- 「ふーっと、ろうそくをけすみたいに息をはいてみよう」
このように、あそびのようなことばで伝えると、お子様もたのしく力を抜けます。できたときは「いまの声、やわらかかったね」と、声のかわり方をほめてあげてください。
痛みがあるときは、むりをしない
肩や首の力を抜く練習は、どれもやさしく行うことが大切です。練習のあとに痛みが出たり、首や肩の痛み、のどの痛みやかすれが何日も続いたりするときは、むりをせず、お医者さんに相談してください。のどのことは、耳鼻科などで相談するとよいでしょう。
まとめ
- 肩や首に力が入るのは、「声を出そう」とがんばる気持ちや、息のすい方、姿勢のくせが関係していることが多い
- 鏡や動画で、肩が上がっていないか、首に力が入っていないかをたしかめる
- 肩は「上げて、すとんと落とす」、首は「ゆっくりたおす」練習でほぐす
- 息は肩を上げずに、おなかまわりがふくらむようにすう
- ハミングや小さめの声から歌いはじめると、力が入りにくい
- お子様には、あそびのようなことばで伝える
- 痛みが続くときは、むりをせずお医者さんに相談する
力の抜き方は、文章だけではつかみにくいこともあります。先生に体の使い方を見てもらうと、自分では気づかないくせがわかることも多いです。お近くの教室やオンラインのレッスンは、こちらからさがせます。歌の教室さがしらくに歌えるようになったら、こどもの歌声グランプリで、その歌声を聞いてもらうのもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、練習の成果をたしかめるきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ