鏡を使った歌の練習。口の形・表情・姿勢を自分でたしかめる方法
「先生に『口をもっと開けて』と言われるけれど、自分では開けているつもり」 「歌っているとき、どんな顔をしているのか、自分ではよくわからない」
歌の練習をしていると、こんなふうに感じることはありませんか。歌は耳で聞くものですが、口の形や表情、姿勢といった「見た目」も、声の出やすさと深くつながっています。でも、歌っている自分の顔や体は、自分ではなかなか見えません。
そこで役に立つのが、鏡を使った歌の練習です。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、鏡を使った歌の練習のしかたをまとめました。立ち方そのものや、顔の筋肉をほぐす練習のくわしい話は別の記事にゆずり、ここでは「鏡をどう使うか」にしぼってお話しします。お子様にも大人の方にも使える方法です。
鏡を使った歌の練習のよいところ
その場ですぐにたしかめられる
録音や録画は、あとから見返して気づく方法です。それに対して鏡は、歌っているその瞬間に、自分の姿を見られます。「あ、いま口がせまくなった」「肩が上がった」と、その場で気づいて、すぐになおせるのが、鏡のいちばんのよさです。
先生のことばが、目で見てわかる
レッスンで言われた「口をたてに開けて」「あごを引いて」といったことばは、自分の感覚だけではわかりにくいことがあります。鏡で見ると、「先生が言っていたのは、こういうことか」と、ことばと形がつながりやすくなります。
道具がかんたん
鏡は、多くの家にすでにあるものです。特別な道具をそろえなくても、今日からはじめられます。
鏡のえらび方と置き方
見たいところが映る大きさにする
口の形や表情を見たいときは、顔が映る鏡でじゅうぶんです。姿勢もいっしょに見たいときは、上半身から全身が映る、大きめの鏡があると便利です。家にある姿見や、洗面所の鏡を使ってもかまいません。
目の高さに合わせる
鏡の位置が低すぎると、のぞきこむように下を向いてしまい、あごが下がってのどがつまりやすくなります。高すぎると、あごが上がってしまいます。顔を正面に向けたまま、自然に見られる高さに置くのがポイントです。
少しはなれて立つ
鏡に近づきすぎると、顔の一部しか見えず、体全体のようすがわかりません。腕をのばしても届かないくらい、少しはなれて立つと、顔と体のバランスが見やすくなります。
明るい場所で使う
部屋が暗いと、口の中や表情がよく見えません。顔に光が当たる、明るい場所で練習しましょう。
鏡で見るポイントは「ひとつずつ」
鏡の前に立つと、あれもこれも気になってしまいます。でも、いちどにたくさんのことを見ようとすると、歌うことに集中できなくなります。その日に見るポイントを、ひとつに決めてから練習するのがおすすめです。
口の形を見る
まずは、口の形からたしかめてみましょう。
- 「あ」「い」「う」「え」「お」の口の形が、それぞれちがって見えるか
- 口が横にばかり広がっていないか
- 口の開き方が、言われたとおりになっているか
- 高い音になったとき、口がきゅっとせまくなっていないか
はじめは、歌わずに「あ・え・い・お・う」と、ゆっくり口の形だけをつくってみるのもよい方法です。形がわかってから、声をのせてみましょう。
口の中を見る
口を開けたときに、舌がどこにあるかも見てみましょう。舌が奥に引っこんで、のどをふさぐような形になっていると、声がこもりやすくなることがあります。気になるときは、先生に「舌の位置はこれでいいですか」と聞いてみてください。
表情を見る
歌っているときの顔は、思っているよりかたいことがあります。
- 眉のあいだに、しわがよっていないか
- 目が、こわばっていないか
- 楽しい歌なのに、こわい顔になっていないか
- ほおが、だらんと下がっていないか
表情は、声の明るさや、聞く人への伝わり方にもつながります。顔をほぐす練習のくわしいやり方は、こちらの記事にまとめています。表情筋を使うボイトレ。顔をほぐして、歌の声を明るくする練習
姿勢を見る
上半身や全身が映る鏡では、姿勢もたしかめられます。
- 肩が、上がっていないか
- 息をすうときに、肩がもち上がっていないか
- あごが、前につき出ていないか
- 体が、左右どちらかにかたむいていないか
立ち方そのものの整え方は、こちらの記事でくわしくお話ししています。歌うときの立ち方・手・目線。見た目でかわる歌の伝わり方
鏡を使った練習の流れの例
ここでは、鏡を使った練習の流れの一例をご紹介します。順番や内容は、習っている先生の指導に合わせて変えてください。
鏡の前で、体をととのえる
まずは、鏡に映る自分を見ながら、肩の力をぬき、まっすぐ立ちます。体がかたむいていないか、さいしょにたしかめておきましょう。
口の形だけをつくる
声を出さずに、「あ・え・い・お・う」の口の形をつくります。鏡を見て、それぞれの形がちがっているか、たしかめます。
声をのせてみる
口の形がわかったら、やさしい声で、ゆっくり母音をのばしてみます。声を出しても、口の形がくずれていないかを見ましょう。
曲の一部を歌う
次に、練習している曲の中で、気になるところだけを歌ってみます。たとえば、高い音が出てくるところ、口がせまくなりやすいところなどです。
鏡を見ないで、もう一度歌う
さいごに、鏡から目をはなして、同じところを歌ってみます。鏡を見ていないときも、さっきの形をたもてているか、感覚でたしかめてみましょう。本番では鏡がないので、この「見ないで歌う」こともとても大切です。
鏡を使うときに気をつけたいこと
見た目ばかり気にしすぎない
鏡を見ていると、形をきれいにすることに夢中になって、声のことを忘れてしまうことがあります。口の形は、声を出しやすくするためのものです。「きれいに見えるか」よりも、「声が楽に出ているか」を大切にしてください。
自分をせめない
鏡に映った自分の顔を見て、はずかしく感じる方もいると思います。でも、歌っている顔は、だれでもふだんとはちがって見えるものです。「なおすところを見つけるため」ではなく、「いまの自分を知るため」と考えると、気持ちが楽になります。
長く見つめすぎない
ずっと鏡を見つめていると、目がつかれたり、体がかたくなったりします。ときどき鏡から目をはなし、体をゆらしたり、肩を回したりして、リラックスしましょう。
録画とくみ合わせる
鏡では、横から見た姿や、歌い終わったあとの表情までは見えにくいものです。ときどきスマホで録画して、鏡では見えないところもたしかめると、気づきがふえます。
のどに違和感があるときは休む
鏡の前で同じところを何回も歌っていると、つい声を出しすぎてしまうことがあります。のどがつかれたと感じたら、声を出さずに口の形だけをたしかめる練習に切りかえましょう。痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
鏡で気づいたことを、レッスンに生かす
気づいたことをメモしておく
鏡の前で「高い音で口がせまくなる」「息をすうと肩が上がる」など、気づいたことがあれば、ひとことでメモしておきましょう。次のレッスンで先生に伝えると、自分に合ったなおし方を教えてもらいやすくなります。
先生の口の形を、よく見ておく
レッスンでは、先生がお手本を見せてくれることがあります。そのときの口の形や表情を、よく見ておきましょう。家に帰ってから、鏡の前で同じ形をつくってみると、レッスンの内容を思い出しやすくなります。
お子様と鏡で練習するときのコツ
遊びのように楽しむ
小さなお子様には、「鏡の中のお友だちと歌ってみよう」「どんなお口になってるかな」と、遊びのように声をかけてみましょう。楽しい気持ちで鏡を見ると、自然と表情もやわらかくなります。
お父様・お母様もいっしょに映る
お父様やお母様がとなりに立って、いっしょに口の形をつくってみるのもおすすめです。「お母さんのお口とくらべてみよう」と、まねっこをしながら練習すると、お子様もわかりやすくなります。
注意はひとつだけにする
お子様の場合、いちどにたくさん言われると、歌うのがいやになってしまうことがあります。その日に伝えることは、ひとつだけにしましょう。できたときには、「お口がよく開いていたね」と、具体的にほめてあげてください。
まとめ
- 鏡を使った歌の練習は、口の形・表情・姿勢を、その場で自分の目でたしかめられる
- 鏡は目の高さに置き、少しはなれて、明るい場所で使う
- 見るポイントは、その日ごとにひとつにしぼる
- 口の形、口の中、表情、姿勢の順に、少しずつたしかめていく
- さいごは鏡を見ないで歌い、感覚でもたしかめる
- 見た目より「声が楽に出ているか」を大切にする
- お子様とは、遊びのように楽しみながら練習する
鏡の前での練習を重ねると、歌っているときの自分の姿が、少しずつわかるようになってきます。練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリに出てみるのもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、口の形や表情の練習が、どんなふうに伝わっているかを知るきっかけにもなります。こどもの歌声グランプリ