施設で歌のボランティア・慰問をするとき。準備と、聞く方への心くばり
「合唱の仲間と、高齢者施設に歌のボランティアに行ってみたい」 「子どもたちの歌を、おじいちゃん・おばあちゃんたちに聞いてもらいたい」 「慰問で歌うことになったけれど、何から準備すればいいのかわからない」
施設での歌のボランティアや慰問は、歌う人にとっても、聞く方にとっても、あたたかい時間になりやすい活動です。いっぽうで、ふだんのステージとはちがう心くばりも必要になります。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、高齢者施設などに外から歌いに行く側にしぼって、申し出るところから当日までの準備と、聞く方への心くばりをまとめます。施設の職員の方が、ふだんの歌の会をどう進めるかについては、こちらの記事に書いています。高齢者施設・デイサービスの歌の会。みんなで歌いやすい童謡・唱歌のえらび方と進め方
歌のボランティアをはじめる前に
どんな施設で歌うのかを知る
歌のボランティアの行き先は、いろいろです。
- 特別養護老人ホームなど、くらしの場になっている施設
- デイサービスなど、日中に通ってくる方の施設
- 病院や、こどもの施設
- 地域のサロンや、集会所の集まり
施設によって、聞く方の年れいや体のようす、すごし方がちがいます。この記事では、主に高齢者施設を思いうかべてお話ししますが、考え方はほかの場所でも役に立つと思います。
申し出るときの方法
施設で歌いたいときは、いきなり行くのではなく、まず施設に連絡をして相談します。
- 施設に電話やメールで、歌のボランティアをしたいと伝える
- 地域の社会福祉協議会(ボランティアセンター)に相談する
- 知り合いの職員の方や、すでに活動している団体に紹介してもらう
連絡するときは、「何人くらいで」「どんな歌を」「どのくらいの時間」歌えるかを、かんたんに伝えるとスムーズです。受け入れの方法やきまりは、施設によってちがいます。
施設の方との打ち合わせで聞いておきたいこと
当日をおだやかにすごすためには、前もっての打ち合わせがとても大切です。とくに、施設のきまりや感染対策は、施設の方とよく相談して、その指示にしたがいましょう。
打ち合わせのチェックリスト
- 日にちと時間、歌える時間の長さ
- 聞いてくださる方の人数や、ようす
- 会場の広さ、ピアノやスピーカーがあるか
- 着がえや荷物をおく場所
- 体調の確認や、手洗い・マスクなどのきまり
- 写真や動画をとってもいいか
- 飲みものやおかしを配ってもいいか(多くの場合、配らないほうが安心です)
聞く方の中には、食べものや飲みものに気をつける必要がある方もいます。何かを配りたいときは、かならず前に施設の方に相談しましょう。
時間は短めに
高齢の方にとって、長い時間すわって聞きつづけるのは、つかれることもあります。30分前後を目安にして、施設の方と相談して決めるのがおすすめです。「もう少し聞きたいな」と思ってもらえるくらいで、ちょうどいいこともあります。
曲のえらび方と、プログラムの組み方
聞く方が知っている歌を中心に
施設での歌は、「聞いてもらう歌」と「いっしょに歌う歌」をまぜると、楽しい時間になりやすいです。
- 聞く方が若いころに親しんだ歌
- 季節を感じる歌
- 手びょうしや、かんたんなふりをつけやすい歌
- 歌う側がとくいな歌(1〜2曲ほど)
どんな歌がよろこばれるかは、施設の方にたずねてみるのがいちばんです。「この前、みなさんで歌った歌」などを教えてもらえることもあります。
プログラムの例
30分くらいの場合、たとえばこんな流れが考えられます。
- はじめのあいさつと、メンバーの紹介(2〜3分)
- 聞いてもらう歌を2曲(6〜8分)
- いっしょに歌う歌を2〜3曲(10分ほど)
- 季節の話や、歌にまつわるちょっとした話(2〜3分)
- さいごに、みんなで知っている歌を1曲
- おわりのあいさつ
曲と曲のあいだに、少しずつ話を入れると、聞く方が一息つけます。
歌詞カードや大きな文字の紙
いっしょに歌う歌は、大きな文字で書いた歌詞の紙を用意すると、歌いやすくなります。前にはり出す方法もあれば、ひとりずつ手元に配る方法もあります。見やすい歌詞カードの作り方は、こちらの記事にまとめています。シニアの歌の会で使う、見やすい歌詞カード・楽譜の作り方
当日の心くばり
高さ(キー)とテンポはゆっくりめ、低めに
高齢の方は、高い声が出にくいことが多いです。いっしょに歌う歌は、ふだんより少し低めにして、テンポもゆっくりめにすると歌いやすくなります。伴奏をする方と、前もって高さを決めておきましょう。
音量は、大きすぎないように
施設の会場は、ホールのように広くないことが多いです。スピーカーの音や、歌う声が大きすぎると、おどろいたり、つかれてしまったりする方もいます。
- はじめに少し歌ってみて、うしろの方に聞こえるか、施設の方にたずねる
- 補聴器をつけている方がいるときは、とくに音量に気をつける
- 前の列の方の近くで、急に大きな声を出さない
声のかけ方
- ゆっくり、はっきり話す
- 「いっしょに歌いましょう」と、やさしくさそう
- 歌わずに聞いている方にも、むりにすすめない
- 目が合ったら、にっこりする
歌わない方も、聞いているだけで楽しんでいることがあります。手びょうしや、うなずきも、りっぱな参加です。
すわったままでも楽しめるように
車いすの方や、立つのがむずかしい方も多いので、手あそびやふりは、すわったままでできるものにしましょう。歌う側がすわって歌う場面をつくるのもいいと思います。すわって歌うときのコツは、こちらの記事にあります。座って歌うときのコツ。いす・車いすでも気持ちよく声を出すために
体調の変化に気をつける
歌っているあいだに、聞いている方のようすがかわることもあります。気になることがあったら、自分たちで何かしようとせず、すぐに施設の方に知らせてください。歌う側も、かぜぎみのときや、のどの調子がわるいときは、むりをせずお休みすることが大切です。
子どもたちが歌いに行くとき
お子様たちが施設で歌うこともあると思います。お父様・お母様には、次のようなことを伝えておくと安心です。
- 大きな声でさわがない、走らない
- 聞いてくださる方の車いすやつえには、さわらない
- 話しかけられたら、ゆっくり、はっきりこたえる
- 「上手に歌う」より「笑顔でとどける」を大切にする
お子様にとっても、自分の歌でだれかがよろこんでくれる経験は、歌うことの大切な意味を知るきっかけになると思います。
写真・動画とプライバシー
施設の中には、写真や動画をとってはいけないところもあります。また、とってよい場合でも、聞く方の顔がうつらないように気をつける必要があることが多いです。
- 撮影の可否は、かならず前に施設の方に聞く
- 聞く方の顔や名前がわかる写真は、SNSにのせない
- 活動の記録をのこしたいときは、施設の方と相談して決める
終わったあとにすること
- 片づけは、きた時よりもきれいにする
- 施設の方に、お礼のことばを伝える
- 次回のことは、その場で決めず、あとで相談する
- メンバーで、よかったことと、次に気をつけたいことを話す
一度きりでなく、季節ごとにたずねる活動になると、聞く方とも顔なじみになり、より楽しい時間になることもあります。
歌う側の気持ちのもち方
「聞かせる」より「いっしょにすごす」
施設での歌は、上手さを見せる場というより、聞く方といっしょにおだやかな時間をすごす場です。音をまちがえたり、歌詞がとんだりしても、笑顔でつづければだいじょうぶです。聞く方は、歌う人の気持ちのあたたかさを、ちゃんと感じとってくださいます。
反応がうすく見えても、気にしない
聞く方の中には、表情に出にくい方や、目をとじて聞いている方もいます。反応がうすく見えても、楽しんでいないとはかぎりません。あとから施設の方に「みなさん、よろこんでいましたよ」と教えてもらえることもあります。
メンバーどうしで声をかけあう
はじめての慰問では、歌う側もきんちょうします。始まる前に、メンバーで「ゆっくり、笑顔で」と声をかけあうと、気持ちがおちつきます。
のどと体のケア
ボランティアの日は、歌うだけでなく、話す時間も長くなりがちです。こまめに水をのみ、のどをいたわりましょう。歌ったあとに痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 施設で歌いたいときは、まず施設や社会福祉協議会に相談する
- 打ち合わせで、時間・会場・きまり・撮影のことをたしかめる
- 施設のきまりや感染対策は、施設の方とよく相談してしたがう
- 歌は、聞く方が知っている歌を中心に、低め・ゆっくりめに
- 音量は大きすぎず、歌わない方にもむりにすすめない
- 体調の変化に気づいたら、すぐに施設の方に知らせる
歌のボランティアは、歌う人にとっても、自分の歌のよさに気づくきっかけになります。もっと歌を学びたくなったら、近くの歌の教室をさがしてみるのもおすすめです。自分の歌をだれかに聞いてもらいたくなったときは、こどもの歌声グランプリもあります。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ