保育士・先生のピアノの弾き歌い。歌とピアノをいっしょにする練習のしかたとコツ
「ピアノだけなら弾けるのに、歌をのせると手が止まってしまう」 「弾き歌いの練習をしているけれど、子どもの前だと頭がまっ白になる」
保育士や幼稚園の先生、保育の勉強をしている学生さんにとって、ピアノの弾き歌いは、とても大事な場面のひとつです。朝の歌、季節の歌、帰りの歌と、子どもたちの前でピアノを弾きながら歌う時間は、毎日のようにあります。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌と伴奏がしっかり合うと、歌はぐっと楽しくなります。でも、歌とピアノを1人でいっしょにするのは、思っている以上にむずかしいことです。
この記事では、子どもの前でする弾き歌いにしぼって、練習のしかたとコツをまとめました。ステージで聞かせる弾き語りではなく、子どもたちといっしょに歌うための弾き歌いのお話です。
弾き歌いがむずかしいと感じる理由
頭が3つのことを同時にしている
弾き歌いでは、右手、左手、歌の3つを、いっしょに動かします。そこに、子どもたちの様子を見ることも加わります。むずかしく感じるのは、あたりまえのことです。
ピアノに集中すると、歌が小さくなる
ピアノに自信がないと、どうしても手もとに目がいき、歌の声が小さくなってしまいます。そうすると、子どもたちも歌いにくくなります。
歌に集中すると、ピアノが止まる
反対に、歌に気持ちが向くと、ピアノの手が止まったり、リズムがくずれたりすることがあります。どちらか一方だけが目立つのではなく、2つがなじむように練習していくことが大切です。
弾き歌いの練習の順番
いきなり全部をいっしょにしようとすると、うまくいかないことが多いです。少しずつ組み合わせていくのがおすすめです。
1 歌だけを、しっかりおぼえる
まずは、ピアノなしで歌だけを練習します。メロディーと歌詞を、何も見なくても歌えるくらいにおぼえておくと、あとで弾き歌いをするときに、頭の中に余ゆうができます。
2 右手だけで、歌いながら弾く
右手がメロディーの楽譜の場合は、右手だけを弾きながら歌ってみましょう。右手と歌が同じ音なので、合わせやすいはずです。
3 左手だけで、歌いながら弾く
次に、左手だけを弾きながら歌います。左手は、歌とちがう動きをすることが多いので、ここがいちばんむずかしいところです。ゆっくりでいいので、左手と歌が合うまで、くり返し練習してみてください。
4 両手で弾いてから、歌をのせる
両手でピアノを弾けるようになってから、歌をのせます。はじめは、歌を小さな声で、口ずさむくらいでかまいません。少しずつ、声を大きくしていきましょう。
5 ゆっくりのテンポから、少しずつ上げる
はじめから本来の速さで弾こうとしないことが大切です。ゆっくりのテンポで、止まらずに最後までいけるようになってから、少しずつ速くしていきます。
楽譜のよみ方に不安がある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。楽譜が読めなくても歌える?楽譜のよみ方のはじめの一歩
歌とピアノを合わせるコツ
左手はかんたんにしてもよい
保育の現場の弾き歌いでは、子どもたちが気持ちよく歌えることがいちばんです。楽譜どおりに弾くのがむずかしいときは、左手を和音だけにする、1小節に1回だけ弾くなど、かんたんな形にしても大丈夫です。
園によっては、楽譜が決まっていることもあるので、まわりの先生に相談しながらすすめると安心です。
息つぎの場所を楽譜に書いておく
歌の息つぎの場所を、楽譜にしるしとして書いておきましょう。ピアノを弾いていると、息つぎをわすれて、とちゅうで苦しくなることがあります。どこで息をすうかを決めておくと、歌もピアノも安定しやすくなります。
むずかしいところだけを取り出して練習する
最初から最後までを何回もくり返すより、つまずくところだけを取り出して練習するほうが、早く弾けるようになることが多いです。
- いつも止まってしまう小節に、しるしをつける
- その小節と、前後の1小節だけを練習する
- できたら、少しずつ前後を広げていく
前奏は、子どもへの合図
前奏は、子どもたちに「これから歌がはじまるよ」と伝える大切な部分です。前奏の最後に、先生が「さん、はい」と声をかけたり、息をすう様子を見せたりすると、子どもたちが歌いはじめやすくなります。
子どもの顔を見ながら弾き歌いするために
手もとを見なくても弾けるところをふやす
弾き歌いになれてきたら、少しずつ手もとから目をはなす練習をしてみましょう。
- 前奏のあいだは、手もとを見てもよい
- 歌がはじまったら、子どもたちのほうを見る時間をつくる
- 1曲のなかで、1か所だけでも顔を上げてみる
全部の時間、顔を上げている必要はありません。少しずつ、子どもたちを見る時間をふやしていけば大丈夫です。
ピアノのおき方を考える
ピアノの向きによっては、子どもたちの顔が見えにくいことがあります。できる場合は、子どもたちが先生の横顔や表情を見られる位置にすわってもらうと、歌いやすくなります。
歌の声は、子どもに届く大きさで
ピアノの音が大きすぎると、先生の歌声が聞こえにくくなります。ピアノは少しやさしめに弾き、歌の声をしっかり届けるように意識してみてください。子どもたちは、ピアノよりも先生の歌声を聞いて歌っていることが多いです。
まちがえたときの立て直し方
止まらないことを大切にする
子どもの前の弾き歌いでは、まちがえないことよりも、止まらないことのほうが大切です。音をまちがえても、そのまま続ければ、子どもたちは歌い続けることができます。
左手を休んでもよい
とちゅうでわからなくなったら、左手を休んで、右手と歌だけで続けてみましょう。それでもむずかしいときは、ピアノを止めて、歌だけで続けても大丈夫です。子どもたちの歌が止まらないことを、いちばんに考えてください。
区切りのよいところから入り直す
もしピアノが止まってしまったら、次の区切りのよいところから入り直します。どこから入り直すかを、楽譜にしるしておくと、本番であわてずにすみます。
練習に取り入れやすい曲
弾き歌いの練習をはじめるときは、短くて、メロディーがわかりやすい曲がおすすめです。たとえば、「チューリップ」「ぶんぶんぶん」「かえるの合唱」「どんぐりころころ」「むすんでひらいて」など、むかしから歌われている童謡は、練習に取り入れやすいと思います。
- 短い曲で、止まらずに弾き歌いできる経験をふやす
- できるようになったら、季節の歌や、少し長い曲にすすむ
- よく歌う曲は、1つずつ確実にできるようにする
1曲が弾けるようになると、その経験がほかの曲にもつながっていきます。
毎日の練習を続けるコツ
1日10分でも、毎日さわる
弾き歌いは、長い時間を週に1回するより、短い時間を毎日続けるほうが、身につきやすいことが多いです。10分でもいいので、ピアノにさわる時間をつくってみてください。
録音・録画で、自分の弾き歌いを聞く
スマホで録音や録画をすると、歌とピアノのバランス、テンポのゆれなど、自分では気づきにくいところがわかります。「歌の声が小さい」「前奏が速すぎる」など、1つずつ直していきましょう。
のどもいたわる
ピアノの練習に集中していると、のどのつかれに気づきにくいことがあります。こまめに水をのみ、声がかすれてきたら、ピアノだけの練習にきりかえるなど、のどを休ませてください。痛みやかすれが続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。
ピアノと歌を両立させる練習の考え方は、こちらの記事でもまとめています。弾き語りの練習のしかた。歌とピアノ・ギターを両立して上手くなるコツ
まとめ
- 弾き歌いがむずかしいのは、3つのことを同時にしているから
- 練習は「歌だけ」「右手と歌」「左手と歌」「両手に歌をのせる」の順番で
- ゆっくりのテンポから、少しずつ速くしていく
- 左手はかんたんな形にしてもよい
- 子どもの顔を見る時間を、少しずつふやしていく
- まちがえても止まらないことを、いちばんに考える
- 短い童謡からはじめて、できる曲を1つずつふやす
弾き歌いは、練習すればするほど、少しずつなじんでいきます。先生のピアノと歌声で、子どもたちが楽しそうに歌ってくれる時間は、きっと何よりのはげみになると思います。歌が大好きな子どもたちのために、こどもの歌声グランプリも開いています。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌を楽しむきっかけのひとつにしていただけたらうれしいです。こどもの歌声グランプリ