声楽のドイツ語・フランス語の発音のきほん。はじめての外国語の歌で気をつけたいこと
「こんど、はじめてドイツ歌曲を歌うことになった」 「フランス歌曲の発音が、どう読めばいいのか、まったくわからない」
声楽を習っていると、イタリア語の歌のつぎに、ドイツ語やフランス語の歌にとりくむことがあります。でも、見なれないつづりや記号が多くて、とまどってしまう方も多いと思います。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。外国語の歌は、ことばの読み方がわかるだけで、ぐっと歌いやすくなります。
この記事では、ドイツ歌曲・フランス歌曲の発音にしぼって、はじめての方がおさえておきたいきほんをまとめました。イタリア語の発音については、べつの記事でくわしくお話ししています。イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために
なお、発音の細かいところは、歌う曲や先生の考え方によってちがうこともあります。この記事は「入り口」として読んでいただき、くわしいところは、かならず先生にたしかめてください。
はじめに知っておきたいこと
カタカナだけにたよりすぎない
外国語の歌詞に、カタカナで読み方をふると、はじめはとても便利です。でも、カタカナでは書きあらわせない音も、たくさんあります。
- カタカナは「だいたいの目安」としてつかう
- 先生のお手本や、ていねいに読んでいる音源をよく聞く
- 自分の読み方を録音して、お手本とくらべる
耳で聞いて、まねすることが、いちばんの近道です。
歌の発音と、ふだんの話しことばはちがうところもある
声楽では、ことばをはっきり伝えるために、ふだんの会話より、ていねいに発音することがあります。また、むかしからの歌い方のならわしで、話しことばとはちがう読み方をするところもあります。だからこそ、歌の発音を教えてくれる先生の話が大切になります。
ドイツ歌曲の発音のきほん
ドイツ語は「書いてあるとおり」に近い
ドイツ語は、つづりと読み方の決まりが、わりとはっきりしています。決まりをいくつかおぼえると、はじめて見る単語でも、読めるようになっていきます。
ウムラウト(ä・ö・ü)
母音の上に点が2つついた文字を、ウムラウトといいます。
- ä(たとえば「Mädchen」) 「エ」に近い音
- ö(たとえば「schön」) 「エ」の口の形のまま、くちびるを丸める
- ü(たとえば「grün」) 「イ」の口の形のまま、くちびるを丸める
ö と ü は、日本語にない音です。舌の位置はそのままで、くちびるだけを前に丸めるのがコツです。鏡を見ながら練習してみてください。
母音の組み合わせ
- ei(たとえば「mein」) 「アイ」と読む
- ie(たとえば「Liebe」) 「イー」とのばす
- eu・äu(たとえば「Freude」) 「オイ」に近い音
ei と ie は、まちがえやすいところです。「うしろの文字で読む」とおぼえておくと、わかりやすいと思います。
ch の読み方
ch は、前にある母音によって、音がかわります。
- a・o・u のあと(たとえば「Nacht」) のどのおくで、息をこするような音
- それ以外(たとえば「ich」) 「ヒ」を息だけでささやくような音
どちらも、声をつけずに、息の音だけで出します。強くやりすぎると、のどに力が入るので、やさしい息で練習しましょう。
子音の読み方で気をつけたいもの
- w(たとえば「wie」) 「ヴ」に近い音
- v(たとえば「Vater」) 多くの単語で「フ」に近い音
- z(たとえば「Herz」) 「ツ」の音
- 母音の前の s(たとえば「Sonne」) 「ズ」に近い音
- 単語のはじめの st・sp(たとえば「Stern」) 「シュト」「シュプ」
語尾の音
単語のおわりにある b・d・g は、音がかわって、それぞれ p・t・k に近く読みます。たとえば「Tag」は、さいごが「ク」に近い音になります。
また、語尾の「-er」は、はっきりした「エル」ではなく、軽い「ア」に近い音で歌うことが多いです。このあたりは、先生によって教え方がちがうこともあります。
子音をていねいに
ドイツ語の歌は、子音がことばの意味を伝える、大切な役わりをもっています。子音をはっきり発音すると、ことばが聞きとりやすくなります。
ただ、子音を強くしすぎると、メロディーがとぎれてしまいます。母音でしっかり歌って、子音は短く、すばやく、と意識してみてください。ドイツ歌曲そのものの楽しみ方は、こちらの記事でもしょうかいしています。リートとは?ドイツ歌曲の楽しみ方と、はじめて歌うときのコツ
フランス歌曲の発音のきほん
フランス語は「読まない文字」が多い
フランス語は、つづりに書いてあっても、読まない文字がたくさんあります。
- 単語のおわりの子音は、読まないことが多い(たとえば「nuit」の t)
- h は、読まない(たとえば「heure」)
- ただし、おわりの c・r・f・l は読むことも多い
例外もたくさんあるので、1つずつ辞書や先生のお手本でたしかめていきましょう。
鼻母音
フランス語には、鼻にぬけるようにひびかせる母音があります。これを鼻母音といいます。
- an・en(たとえば「enfant」)
- on(たとえば「mon」)
- in・ain(たとえば「matin」)
日本語の「ン」のように、舌をうわあごにつけて音をとじないのがポイントです。母音をのばしながら、息の一部を鼻のほうへ流すイメージで歌います。
母音の読み方
- u(たとえば「lune」) 「イ」の口の形で、くちびるを丸める
- ou(たとえば「amour」) くちびるを丸めた「ウ」
- eu(たとえば「fleur」) 「エ」の口の形で、くちびるを丸める
- oi(たとえば「soir」) 「ワ」に近い音
- ai・è・ê(たとえば「rêve」) 口を少しひろめにした「エ」
ドイツ語の ü とフランス語の u は、とても近い音です。片方を練習すると、もう片方にも生かせます。
語尾の e
単語のおわりの e は、話しことばでは読まないことが多いです。でも、歌では、その e に音符がついているときは、軽く、あいまいな「ウ」と「エ」のあいだのような音で歌うことがあります。
ここは、フランス歌曲ならではのところです。楽譜を見て、音符があるかどうかをたしかめ、先生にどう歌うかを聞いておきましょう。
つなげて読む音(リエゾン)
ふだんは読まない語尾の子音が、つぎの単語が母音ではじまるときに、つながって読まれることがあります。これをリエゾンといいます。
たとえば「les amis」は、「レ・アミ」ではなく「レザミ」のように、つなげて読みます。
どこでつなげて、どこでつなげないかには決まりがあり、歌では先生の考え方によってもちがうことがあります。楽譜に、つなげるところのしるしを書きこんでおくと、まちがえにくくなります。
r の読み方
フランス語の r は、ふだんの会話では、のどのおくで出す音が多いです。歌では、舌先を軽くはじく音で歌うこともあります。どちらで歌うかは、曲や先生によってちがうので、レッスンでたしかめてください。
練習のすすめ方
1 ことばだけを、ゆっくり読む
いきなり歌うのではなく、まずは歌詞をゆっくり読む練習からはじめましょう。
- 1行ずつ、先生のお手本をまねして読む
- 読めないところに、えんぴつでしるしをつける
- なれてきたら、リズムに合わせて読む
2 母音だけで歌ってみる
子音をぬいて、母音だけでメロディーを歌ってみると、声のつながりがよくなります。そのあとに子音をもどすと、なめらかに歌いやすくなります。
3 意味を知っておく
ことばの意味がわかると、どの単語を大切に歌えばよいかが見えてきます。1つ1つの単語の意味を、楽譜の下に書いておくのもおすすめです。
4 録音してくらべる
自分の発音を録音して、お手本とくらべてみましょう。ちがうところに気づくことが、上達への第一歩です。
のどをいためないように
外国語の音を出そうとして、のどや口のまわりに力が入りすぎることがあります。つかれたら休み、むりをしないでください。痛みやかすれがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。
まとめ
- カタカナは目安として、お手本をよく聞いてまねする
- ドイツ語は、ウムラウト、ei と ie、ch、語尾の音、子音のていねいさがポイント
- フランス語は、読まない文字、鼻母音、丸い母音、語尾の e、リエゾンがポイント
- まずはゆっくり読む、母音で歌う、意味を知る、録音してくらべる
- 細かいところは、曲や先生によってちがうので、レッスンでたしかめる
外国語の歌にとりくんで、その成果をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、外国語の歌のつぎの目標を見つけるきっかけになると思います。発音をみてくれる先生をさがしたいときは、こちらもつかってみてください。歌の教室さがしこどもの歌声グランプリ