合唱の伴奏者になったら。ピアノ伴奏のコツと、歌とのあわせ方
「合唱コンクールの伴奏者に、えらばれた」 「ピアノは習っているけれど、合唱の伴奏ははじめて。何に気をつければいいの?」
合唱の伴奏者は、ピアノがひける人にまかされることが多い役目です。ひとりでひくピアノの曲とはちがい、伴奏は、たくさんの歌声といっしょに音楽をつくります。そのぶん、ひとりで練習しているときには気づかない、むずかしさもあります。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。歌う人にとって、伴奏はとても心強い支えです。伴奏が安定していると、歌う人は安心して声を出すことができます。
この記事では、合唱の伴奏のコツを、伴奏する人の目線でお話しします。楽譜の読みこみ方から、歌を聞きながらひく練習、指揮者や歌とのあわせ方、本番の心がまえまで、順番にまとめました。お子様が伴奏者になったお父様・お母様にも、おうちでの声かけの参考にしていただけたらうれしいです。
合唱の伴奏者の役目とは
「主役をささえる」ピアノ
合唱の伴奏は、歌を引き立てるためのピアノです。ピアノの発表会のように、自分の音を聞かせるのとは少し考え方がちがいます。
- 歌う人に、はじめの音や速さを伝える
- 歌のあいだ、音程やリズムのよりどころになる
- 前奏や間奏で、曲のふんいきをつくる
- 歌が少しずれても、全体をまとめる
伴奏者は、合唱を下からささえる土台のような存在です。
伴奏がうまくいくと、歌がのびのびする
歌う人は、伴奏の音を聞きながら、自分の音程や入りのタイミングをたしかめています。伴奏が安定していると、歌う人は迷わずに歌えます。合唱コンクールの伴奏者は、目立たないようでいて、合唱のできばえを大きく左右する大切な役目です。
練習をはじめる前に、楽譜を読みこむ
歌のパートも見ておく
合唱の伴奏の楽譜には、ピアノの段の上に、歌のパートの段が書かれていることがほとんどです。ピアノの音符だけを見て練習しがちですが、歌のパートも必ず見ておきましょう。
- どこで歌が入るか
- 歌がのばしているところ、休んでいるところ
- 歌詞の内容と、曲の山場
- 息つぎをしそうな場所
歌の流れを知っておくと、「ここは歌が目立つところだから、ピアノはひかえめに」「ここは歌が休んでいるから、ピアノで曲をつなぐ」といった判断ができるようになります。
歌詞を読んで、曲のイメージをもつ
合唱曲には、かならず歌詞があります。歌詞を声に出して読んでみると、曲がどんな気持ちを伝えたいのかが見えてきます。明るい曲なのか、しずかな曲なのか。伴奏の音色も、歌詞のイメージに合わせてかえていきましょう。
むずかしいところに、しるしをつける
ひきにくいところ、指づかいに迷うところには、早めにしるしをつけておきます。本番までの時間がかぎられている場合は、むずかしいところから先に練習すると、あとであわてずにすみます。
合唱の伴奏のコツ ひき方編
いちばん大事なのは「止まらない」こと
合唱の伴奏で、まずめざしたいのは、止まらずにひきつづけることです。ひとりでひくときは、まちがえたらひきなおすこともできます。でも、伴奏で止まってしまうと、歌っている人たちも止まってしまいます。
- まちがえても、ひきなおさない
- 右手がむずかしいときは、左手のベースの音だけでもひきつづける
- リズムをくずさないことを、音をまちがえないことよりも大事にする
練習のときから、「まちがえても止まらずに最後までひく」通し練習を、何度かしておきましょう。
音量は、歌より少しひかえめに
ピアノは、とても大きな音が出る楽器です。合唱といっしょにひくときは、歌声がかくれないように、ひかえめな音量を心がけましょう。
- 歌が入っているところは、少し音を小さく
- 前奏・間奏・後奏は、しっかりとひいてよい
- 低い音(左手)は、ひびきやすいので、とくに強くなりすぎないように
ただし、小さくしすぎると、歌う人が音程をとりにくくなります。歌う人が「聞こえる」けれど「じゃまにならない」くらいが目安です。
ペダルはふみすぎない
ペダルを長くふみつづけると、音がにごって、歌う人が音程をとりにくくなります。楽譜に書かれたペダルの指示を守りながら、和音がかわるところでは、こまめにふみかえるようにしましょう。
前奏は「曲の顔」
前奏は、合唱が歌いだす前に、曲のふんいきや速さを伝える大切な部分です。前奏の速さが、そのまま歌の速さになります。あわてて速くなりすぎないよう、落ち着いてひきはじめましょう。
間奏や後奏も、歌が休んでいるあいだの「つなぎ」です。ここでピアノが気持ちをこめてひくと、合唱全体の印象がぐっとよくなります。
歌とのあわせ方
歌を聞きながらひく練習
ひとりで練習しているときから、歌のメロディーを思いうかべながらひくようにしましょう。
- 歌のパートを口ずさみながらひいてみる
- 合唱の音源があれば、それに合わせてひいてみる
- 家族にメロディーを歌ってもらい、いっしょに合わせてみる
ピアノの音だけを聞いていると、歌と合わせたときに、ずれに気づきにくくなります。耳の半分は自分のピアノ、もう半分は歌に、というイメージで練習するとよいと思います。
歌の息つぎを感じる
歌う人は、フレーズの終わりで息をすいます。伴奏者がその息つぎを感じとって、ほんの少しだけ間をあけると、歌う人はとても歌いやすくなります。とくに、ゆっくりした曲では、息つぎの場所でピアノが先に進みすぎないように気をつけましょう。
歌の入りをささえる
歌いだしの前には、伴奏者が歌う人の入りをささえることも大切です。前奏の最後の部分は、テンポをくずさずに、はっきりとひきます。歌いだしの音がわかりにくい曲では、先生と相談して、はじめの音を少し強めにひくなどの工夫をすることもあります。
歌う人の目線から見た伴奏合わせについては
歌う人の立場から、伴奏の人とどう合わせればいいかは、こちらの記事でくわしくお話ししています。伴奏する側の人も、歌う人が何を気にしているのかを知っておくと、合わせやすくなります。ピアノ伴奏者との合わせ方|はじめての伴奏合わせで気をつけることと、当日までの準備
指揮者との合わせ方
指揮者と、テンポを話し合っておく
合唱コンクールでは、指揮者がいることがほとんどです。伴奏者は、指揮者と次のようなことを、事前に話し合っておきましょう。
- はじめのテンポ
- 速さがかわるところ、ゆっくりになるところ
- 前奏をどのタイミングでひきはじめるか
- 曲の最後の音を、どのくらいのばすか
伴奏者と指揮者の考えがずれていると、歌う人はどちらに合わせればいいか迷ってしまいます。
指揮を「目のはしで」見る
伴奏中は、楽譜と鍵盤を見ながらひくので、指揮者をずっと見ていることはできません。そこで、ピアノの位置から指揮者が目のはしに入るようにしておくと、テンポや合図を感じとりやすくなります。
本番の会場では、ピアノの向きや場所が、練習のときとちがうこともあります。リハーサルができる場合は、指揮者が見えるかどうかを、かならずたしかめておきましょう。
指揮者に合わせつつ、テンポをささえる
基本は、指揮者のテンポに合わせます。ただ、歌が急いでしまったり、おそくなったりしたときに、ピアノが安定したテンポをたもつことで、全体がもとにもどることもあります。指揮者と伴奏者が、いっしょに合唱をささえる気持ちでいると、まとまりのある演奏になります。
クラス全体での練習のすすめ方や、指揮者・伴奏者の役わりについては、こちらにもまとめています。中学・高校の合唱コンクール、クラスで練習するときのコツ。指揮者と伴奏者の役わりも
本番に向けての準備と心がまえ
楽譜は、めくりやすくしておく
本番で楽譜をめくるところは、事前にたしかめておきましょう。めくりにくい場所は、楽譜をコピーしてつなげるなどの工夫をする人もいます。ただし、学校や大会によって楽譜のあつかいに決まりがあることもあるので、先生に相談してから準備してください。
指をあたためておく
緊張すると、手がつめたくなって、指が動きにくくなることがあります。本番前は、手をにぎったり開いたりして、指をあたためておきましょう。ふだんから、本番の前にどんな準備をすると落ち着くのか、練習のときにためしておくと安心です。
「完ぺき」より「止まらず最後まで」
本番では、だれでも緊張します。少しまちがえても、止まらずにひきつづければ、歌う人はほとんど気になりません。伴奏者がにこやかに、落ち着いてひいている姿は、歌う人の大きな安心につながります。
お父様・お母様ができること
お子様が伴奏者になったときは、家での練習を、そっと見守ってあげてください。「まちがえないでね」より、「止まらずにひけたね」「歌が入るとどんな感じかな」といった声かけのほうが、お子様は前向きに練習できると思います。練習が長くなって、手首や指が痛むときは、むりをさせずに休ませてあげましょう。
まとめ
- 合唱の伴奏者は、歌をささえる土台のような役目
- 楽譜は、ピアノだけでなく歌のパートと歌詞も読みこむ
- いちばん大事なのは、まちがえても止まらないこと
- 音量は歌より少しひかえめに、ペダルはふみすぎない
- 歌の息つぎを感じて、歌う人が歌いやすい伴奏を
- 指揮者とテンポや合図を話し合い、目のはしで指揮を見る
- 本番は「完ぺき」より「止まらず最後まで」
合唱の伴奏は、歌う人といっしょに音楽をつくる、やりがいのある役目です。伴奏をきっかけに、歌うことそのものにも興味がわいたお子様は、こどもの歌声グランプリにも挑戦してみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌の励みになると思います。こどもの歌声グランプリ