歌のフェイクとは?メロディをくずす歌い方と、はじめての練習
「歌い方のフェイクとは、どういうもの?」 「楽譜どおりではない歌い方を聞くと、かっこいいなと思うけれど、自分にもできるのかな」
歌番組やライブを聞いていると、同じ曲なのに、楽譜とは少しちがうメロディで歌っている場面があります。音をこまかくゆらしたり、のばす音のとちゅうで上や下にまわったりする歌い方です。これを「フェイク」とよぶことがあります。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌は、同じ曲でも、歌う人によって聞こえ方がずいぶんかわります。フェイクも、その「その人らしさ」を出す方法のひとつです。
この記事では、フェイクの歌い方にしぼって、どんなものなのか、はじめての方がどこから練習すればよいのか、気をつけたいことは何かを、やさしくまとめます。しゃくりやフォールなど、ほかのテクニックのくわしい話は、べつの記事にまとめています。
歌い方のフェイクとは
メロディを、自分なりにかえて歌うこと
フェイクとは、もとのメロディを少しくずしたり、かざりをつけたりして歌うことです。英語の「フェイク」には「にせもの」という意味もありますが、歌ではわるい意味ではありません。「楽譜のメロディをもとにして、自分なりのメロディにかえる」くらいに考えるとわかりやすいです。
たとえば、次のようなものがあります。
- のばす音を、上の音や下の音にまわしてから、もとの音にもどる
- 1つの音を、こまかい音の動きに分けて歌う
- サビの終わりなど、決まった場所で、音を少し高くかえて歌う
- 2回目のくりかえしで、1回目とはちがうメロディにする
ジャンルでいうと、ポップスやゴスペル、R&B、ジャズなどでよく聞かれます。
アドリブとのちがい
フェイクとにた言葉に「アドリブ」があります。アドリブは、その場で思いついたことを歌うことです。フェイクは、その場で思いつくこともありますが、前もって考えておいて、決めたとおりに歌うことも多いです。
はじめのうちは、その場で考えるのはむずかしいので、「ここをこうかえる」と決めてから練習するのがおすすめです。
どこに入れることが多いか
フェイクは、曲のどこにでも入れるわけではありません。よく入れるのは、次のような場所です。
- フレーズの終わりの、のばす音
- サビのさいごの音
- 曲の終わり近くの、もりあがる場所
- 歌がお休みしている間の、短いあいの手
反対に、歌い出しやことばがたくさんつまっている場所は、もとのメロディのままのほうが、ことばが伝わりやすいです。
フェイクを練習する前に、たしかめておきたいこと
もとのメロディを正しく歌えるか
フェイクは、もとのメロディをしっかり歌えてこそ生きる歌い方です。もとの音があやふやなまま、くずしてしまうと、聞いている人には「音がずれている」と聞こえてしまいます。
まずは、楽譜どおり、または原曲どおりに、音程とリズムを正しく歌えるかをたしかめましょう。スマホで録音して聞いてみると、わかりやすいです。
曲のコードや流れを、なんとなく感じる
むずかしい理論を知らなくても、だいじょうぶです。ただ、伴奏をよく聞いて、「この音の上なら気持ちよくひびく」「この音だと、ぶつかって聞こえる」という感覚をもつことは大切です。
耳で音をひろう練習は、こちらの記事にまとめています。歌が上手くなる「聞く」練習。耳コピで歌を練習するコツと、耳をそだてる方法
のどに力が入っていないか
こまかく音を動かそうとすると、のどやあごにぎゅっと力が入りやすくなります。力が入ったままだと、音がかたくなり、のどもつかれます。肩やあごの力をぬき、らくに声が出る状態で練習しましょう。
はじめてのフェイク練習。5つのステップ
ステップ1 「ア」でゆっくり音を動かす
まずは、ことばをつけずに「ア」や「ウ」で練習します。
- ドの音をのばす
- ド・レ・ドと、となりの音に上がってもどる
- ド・シ・ドと、となりの音に下がってもどる
はじめは、1つずつの音がはっきり聞こえるくらい、ゆっくりで歌いましょう。速さよりも、音がはっきりしていることが大切です。
ステップ2 3つの音、5つの音とふやす
なれてきたら、ド・レ・ミ・レ・ドのように、動く音の数をふやします。上がって下がるだけでなく、ド・レ・ド・シ・ドのように、上と下の両方にまわる動きもやってみましょう。
ピアノやアプリで音をたしかめながら、1音ずつ合っているかを聞きます。
ステップ3 すきな曲の「のばす音」に1か所だけ入れる
すきな曲の中から、のばす音を1つえらびます。そこに、ステップ1で練習した「となりの音に上がってもどる」動きを入れてみましょう。
入れるのは、1曲の中で1か所だけでじゅうぶんです。たくさん入れるより、1か所をきれいに歌えるほうが、聞いている人にもすてきに聞こえます。
ステップ4 録音して、もとのメロディとくらべる
フェイクを入れたものと、入れないものを、両方録音してくらべてみましょう。
- 音がぼやけていないか
- リズムがおそくなったり、速くなったりしていないか
- ことばが聞きとりにくくなっていないか
- 入れたほうが、曲の気持ちに合っているか
「入れないほうがよかった」と感じることも、もちろんあります。それも大切な気づきです。
ステップ5 少しずつ速くする
ゆっくりできるようになったら、少しずつ速くしていきます。きゅうに速くすると、音がつぶれてしまうので、何回かに分けて、すこしずつ上げていきましょう。
フェイクを入れるときの考え方
曲の気持ちに合っているか
フェイクは、目立たせるためのものではなく、曲の気持ちをもっと伝えるためのものです。しずかな悲しい歌に、はでな動きを入れると、気持ちとちぐはぐに聞こえることがあります。
「ここで気持ちが強くなるから、少しだけ音を動かす」というように、理由をもって入れると、自然に聞こえやすくなります。
1回目はもとのまま、2回目に少しかえる
同じメロディが2回出てくる曲なら、1回目はもとのメロディのまま歌い、2回目に少しだけかえるのも、よくある方法です。聞いている人は、1回目でメロディをおぼえているので、2回目のちがいを楽しめます。
まねから入るのも1つの方法
すきな歌手の歌い方をまねして練習するのも、フェイクをおぼえる方法の1つです。ただし、まねだけで終わらず、「自分ならどうかえるか」を少しずつ考えていくと、その人らしい歌になっていきます。
やりすぎないための注意
入れすぎると、メロディがわからなくなる
フェイクを入れすぎると、もとのメロディがわからなくなり、「何の曲かわからない」と思われることもあります。とくに、はじめて聞く人が多い場では、もとのメロディを大切にしたほうが、伝わりやすいです。
コンクールや発表会では、ジャンルに合わせて
声楽や童謡のコンクールでは、楽譜どおりに歌うことが大切にされることが多いです。一方で、ポップスなどのジャンルが自由な場では、ほどよいフェイクがその人らしさとして聞いてもらえることもあります。出る場のきまりや、ジャンルのふんいきに合わせて考えましょう。
のどがつかれたら休む
こまかい音の動きを何回もくりかえすと、思ったよりのどがつかれます。練習は短い時間で区切り、つかれを感じたら休みましょう。痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
お子様がフェイクにあこがれたら
お子様が、テレビやライブを見て「あんなふうに歌いたい」と言うことがあります。そんなときは、まず「かっこいいね」と気持ちを受けとめてあげてください。
そのうえで、もとのメロディを正しく歌えることが、かっこいいフェイクへの近道だと伝えてあげるとよいと思います。小さなお子様の場合は、むずかしい動きよりも、のびのびと声を出すことを大切にしましょう。
まとめ
- 歌い方のフェイクとは、もとのメロディをくずしたり、かざりをつけたりして歌うこと
- はじめは、もとのメロディを正しく歌えるかをたしかめる
- 「ア」でゆっくり、となりの音に上がってもどる練習からはじめる
- 曲に入れるのは、のばす音などに1か所だけから
- 録音して、入れたほうが曲に合っているかをくらべる
- 入れすぎず、出る場のジャンルやきまりに合わせる
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
しゃくりやフォールなど、ほかのテクニックについては、こちらの記事でくわしくまとめています。しゃくり・フォールとは?歌のテクニックのつかい方と、やりすぎない注意自分らしい歌い方を見つけたら、だれかに聞いてもらうのもよい練習になります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ