カウンターテナーとは?男性の高い声のひみつと、聴きどころ
「男の人なのに、女の人のような高い声で歌っていて、びっくりした」 「カウンターテナーって、テノールとはちがうの?」
声楽のコンサートや動画で、カウンターテナーの歌声をはじめて聞いて、こんなふうに思った方もいらっしゃると思います。男性の声とは思えないような、高くてやわらかい声は、一度聞くとわすれられない声です。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、声楽の声の種類(声種)の一つとしての、カウンターテナーについてお話しします。どんな声なのか、男性がどうして高い声で歌えるのか、ほかの声とのちがい、そして、はじめて聴くときの聴きどころをまとめました。
カウンターテナーとは?
男性が、女性のアルトに近い高さで歌う声
カウンターテナーとは、おとなの男性が、女性のアルトやメゾソプラノに近い高さで歌う声のことです。また、そのような声で歌う歌手のことも、カウンターテナーとよびます。
ふつう、おとなの男性の声は、高いほうからテノール、バリトン、バスと分けられます。カウンターテナーは、そのどれよりも高い音域で歌う、男性の声種です。
「テナー」とついているけれど
名前に「テナー(テノール)」とついているので、テノールの一つだと思われることがありますが、歌う高さはテノールよりずっと高く、女性の声のはんいに入ります。
ことばの由来にはいろいろな説明がありますが、ここでは「男性が高い声で歌う、特別な声種」とおぼえておけば、だいじょうぶです。
男性アルト、ソプラニスタということばも
カウンターテナーに近いことばとして、「男性アルト」ということばがつかわれることもあります。また、さらに高く、ソプラノの音域まで歌う男性歌手を「ソプラニスタ」とよぶこともあります。
声種の分け方やよび方は、国や時代、歌う人によっても少しずつちがいます。
男性なのに、どうして高い声が出るの?
裏声のような声を、声楽の声としてみがいている
男性も、ふだんの話し声とはちがう、高い裏声を出すことができます。カウンターテナーは、おもにこの高い声の出し方をもとに、長い時間をかけて、ホールにひびく声楽の声へとみがいていきます。
ふつうの裏声は、細く、弱い声になりやすいですが、カウンターテナーの声は、しっかりとひびき、ことばもはっきり聞こえます。これは、息のつかい方や体のひびかせ方を、ていねいに練習しているからです。
裏声やファルセットそのもののしくみについては、こちらの記事でくわしく書いています。ファルセットとは?裏声との関係と、歌での上手なつかい方
低い音は、ふだんの声をつかうことも
カウンターテナーの歌手は、高い音だけでなく、低い音では、ふだんの男性の声に近い出し方をつかうこともあります。高い声と低い声を、なめらかにつないで歌うのも、カウンターテナーの大切な技術の一つです。
だれでもすぐに出せるわけではない
高い裏声が出せるからといって、すぐにカウンターテナーとして歌えるわけではありません。声に合っているかどうか、先生といっしょにたしかめながら、時間をかけてそだてていく声です。
ほかの声とのちがい
テノールとのちがい
テノールは、男性の声の中でいちばん高い声種ですが、おもにふだんの声に近い、力強い声で歌います。カウンターテナーは、それよりさらに高い音域を、やわらかくすんだ声で歌います。
女性のアルト・メゾソプラノとのちがい
歌う高さは、女性のアルトやメゾソプラノとかさなります。ただ、声の色はちがいます。カウンターテナーの声は、女性の声とも、子どもの声ともちがう、ふしぎな、すき通ったひびきだと言われることが多いです。
声楽の声の種類ぜんたいについては、こちらの記事にまとめています。声楽の声の種類とは?ソプラノ・メゾソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バスのちがい
ボーイソプラノとのちがい
声がわり前の男の子の高い声と、カウンターテナーの声は、どちらも「男性の高い声」ですが、しくみがちがいます。男の子の声は、声がわり前の体でそのまま出る高い声です。カウンターテナーは、声がわりのあとのおとなの男性が、高い声の出し方をみがいて歌う声です。
カウンターテナーが歌う曲
バロック時代の音楽
カウンターテナーがよく歌うのは、バロック時代とよばれる、今からおよそ300年から400年ほど前のころの音楽です。たとえば、ヘンデルのオペラや、バッハの宗教曲のアルトのパートなどを、カウンターテナーが歌うことがよくあります。
この時代のオペラには、男性が高い声で歌う役がたくさんありました。その中には、もともとカストラートとよばれる歌手のために書かれた役もあります。カストラートは、子どものころの高い声をのこすための処置をうけた男性歌手で、今はもういません。そうした役を、今はカウンターテナーや、女性のメゾソプラノが歌うことが多いです。
20世紀からふたたび注目された
カウンターテナーの声は、20世紀に入って、むかしの音楽を当時のやり方で演奏しようという動きが広がったころから、ふたたび注目されるようになりました。いまでは、世界中のオペラやコンサートで、カウンターテナーの歌声を聞くことができます。
新しい時代の曲も
バロック時代の曲だけでなく、20世紀の作曲家が、カウンターテナーのために書いた曲もあります。たとえば、イギリスの作曲家ブリテンのオペラ「夏の夜の夢」には、カウンターテナーが歌う役があります。また、合唱曲や歌曲、ポップスなどで、その声を生かすこともあります。
はじめて聴くときの聴きどころ
声の色そのものを楽しむ
まずは、むずかしいことを考えずに、声の色そのものを楽しんでみてください。男性とも女性とも、子どもともちがう、そのひびきに、ふしぎな美しさを感じると思います。
高い声と低い声のつなぎ目
カウンターテナーの歌を聞くときは、高い音から低い音へ、低い音から高い音へうつるところに耳をすませてみてください。声の出し方がかわるところを、どれだけなめらかにつないでいるかは、聴きどころの一つです。
かざりの多いメロディ
バロック時代の曲には、こまかく音がうごく、かざりの多いメロディがよく出てきます。カウンターテナーが、軽い声でこまかい音をころがすように歌うところは、とても聞きごたえがあります。
楽器とのかけあい
バロック時代の曲では、チェンバロや弦楽器など、むかしの楽器といっしょに歌うことがよくあります。声と楽器がおたがいに追いかけっこをするような、かけあいの部分にも注目してみてください。
ことばの伝え方
高い声で歌っていても、ことばをていねいに伝えているところも、カウンターテナーの歌の魅力です。歌詞の意味を、プログラムや訳でたしかめてから聞くと、より楽しめると思います。
よくある質問
男の子でも、カウンターテナーをめざせる?
カウンターテナーは、声がわりのあとの声で歌う声種です。声がわり前の男の子は、まずはいまの声で、のびのびと歌うことを大切にしてください。声がわりのあと、高い声に興味があれば、先生に相談しながら考えていくとよいと思います。
高い裏声の練習で、のどをいためない?
高い声を、むりにしぼり出すように練習すると、のどに力が入ってしまいます。はじめは小さな声で、らくに出せるはんいから練習しましょう。痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
どこで聞けるの?
バロック音楽のコンサートや、オペラの公演などで聞くことができます。また、合唱団の中で、アルトのパートを男性が歌っていることもあります。
まとめ
- カウンターテナーとは、おとなの男性が、女性のアルトやメゾソプラノに近い高さで歌う声種のこと
- 高い裏声のような出し方をもとに、ホールにひびく声楽の声としてみがいている
- テノールよりずっと高く、女性とも子どもともちがう、すき通ったひびき
- ヘンデルのオペラやバッハの宗教曲など、バロック時代の音楽でよく活やくする
- 聴きどころは、声の色、高い声と低い声のつなぎ目、かざりの多いメロディ
- 高い声の練習は、むりをせず、らくなはんいから
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