跳躍する音程の歌い方。歌で音が飛ぶところが取れないときのコツ
「メロディが急に高く上がるところで、いつも音がはずれてしまう」 「音が飛ぶところになると、声がひっくり返ったり、届かなかったりする」
歌を練習していると、こんななやみにぶつかることがあります。となりの音へ少しずつ動くところは歌えても、大きく音が飛ぶところになると、急にむずかしく感じるものです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、メロディの中で音が大きく上がったり下がったりする「跳躍(ちょうやく)」の音程にしぼって、歌い方のコツと、家でできる練習をまとめました。お子様にも、大人の方にも、つかえる考え方です。
跳躍とは?音が飛ぶメロディのこと
となりの音ではなく、はなれた音へ動く
メロディの動き方には、大きく分けてふたつあります。
- 順次進行:ドレミのように、となりの音へ順番に動く
- 跳躍進行:ドからソ、ドから上のドのように、はなれた音へ飛ぶ
この、はなれた音へ飛ぶ動きを「跳躍」とよびます。歌の中では、さびの入り口や、気持ちが高まるところ、よびかけるようなところで、よく出てきます。
跳躍がむずかしい理由
跳躍のところでは、短いあいだに、声の高さを大きくかえなければなりません。そのため、つぎのようなことがおこりやすくなります。
- 上の音に届かず、低めになる
- 上の音をこえて、高めになってしまう
- 下の音が、ぼやけて聞こえる
- 声の感じが急にかわって、ひっくり返る
どれも、歌が下手だからおこるのではありません。体と耳の準備が、音の動きに追いついていないだけのことが多いです。
歌で音が飛ぶと取れない、よくある原因
つぎの音を頭の中で鳴らせていない
音が飛ぶところでずれる、よくある原因のひとつは、つぎの音の高さを、歌う前に頭の中で思いうかべられていないことです。「たぶんこのくらい」と声を出してから探すと、どうしてもずれてしまいます。
上の音を「がんばって」出そうとする
高い音へ飛ぶとき、つい体に力を入れて、声を押し上げようとしがちです。あごが上がったり、首に力が入ったりすると、声がかたくなり、かえって音が届きにくくなります。
下の音で気がぬける
下へ飛ぶときは、「下りるだけだから」と気がゆるみやすくなります。そうすると、下の音がぼやけたり、声が急に小さくなったりします。
息がとちゅうでとぎれる
跳躍の前で息を止めたり、息がたりなくなったりすると、つぎの音を新しく出しなおすことになり、音程がずれやすくなります。
上がる跳躍の歌い方のコツ
下の音のうちに、上の音を準備する
上へ飛ぶときは、下の音を歌っているあいだに、もう上の音の高さを頭の中で鳴らしておきます。「つぎはあの音」と決めてから動くと、声が迷わずに届きやすくなります。
上の音は「上からとる」イメージで
高い音を、下から押し上げるのではなく、上からそっとつかまえるようなイメージで歌ってみましょう。ボールを投げ上げるより、上にある棚に手をのばして、ものをそっと取るような感じです。
あごを上げず、体は下に落ちつける
音が高くなるほど、あごが上がりやすくなります。目線はまっすぐのまま、足のうらで床をしっかりふんで、体は下に落ちつけておくと、のどに力が入りにくくなります。
口の中を少し広げておく
上の音に飛ぶ少し前から、口の中を少し広げておくと、声がひびきやすくなります。あくびのはじめのような感じを思い出してみてください。大きく口をあける必要はありません。
下がる跳躍の歌い方のコツ
下の音も「ていねいに置く」
下へ飛ぶときは、落ちるように下りるのではなく、下の音をていねいに置くつもりで歌いましょう。高い音のひびきを少しのこしたまま下りると、声の感じが急にかわりにくくなります。
声を押しつけない
低い音を出そうとして、のどをぐっと下に押しつけると、声がこもったり、音程が低くなりすぎたりします。下の音でも、らくに話すような声の出し方を意識してみてください。
息の流れをとめない
下りたあとに声が小さくならないよう、息の流れはそのまま続けます。高い音から低い音へ、一本の線でつながっているイメージです。
声の切りかわりに気をつける
大きく音が飛ぶところでは、地声と裏声の境目をまたぐことがあります。そこで声がひっくり返ったり、急に声の感じがかわったりするのは、よくあることです。
- 跳躍の前後を、小さめの声でゆっくり歌ってみる
- 境目のあたりを、ハミングでなめらかにつないでみる
- 声の感じがかわってもよいので、まずは音程を合わせる
地声と裏声のつなぎ方については、こちらの記事でくわしくまとめています。地声と裏声の違いとは?切り替えのコツと、境目をなめらかにする練習
家でできる跳躍の練習
ふたつの音を聞いてから歌う
ピアノや鍵盤のアプリで、跳躍のふたつの音を鳴らします。まずは聞くだけ。つぎに、上の音を頭の中で鳴らしてから、声に出して歌います。「聞く、思いうかべる、歌う」の順番を大切にしましょう。
あいだの音をうめてから、ぬいていく
いきなり飛ぶのがむずかしいときは、あいだの音を順番に歌ってから、少しずつぬいていく練習がおすすめです。
- ドレミファソと、順番に上がる
- ドミソと、ひとつおきに上がる
- ドからソへ、まっすぐ飛ぶ
あいだの音を通っていた感覚がのこるので、まっすぐ飛ぶときにも、音のきょりがつかみやすくなります。
サイレンのように、なめらかに上り下り
口をとじたハミングや「う」の音で、救急車のサイレンのように、低い音から高い音へ、なめらかに上がって下りてきます。跳躍のときの声の動きを、のどにやさしく体に覚えさせる練習です。のどがつかれない、らくな高さではんいを決めてください。
曲の跳躍だけを取り出す
練習している曲の中で、音が大きく飛ぶところに印をつけます。そこだけを取り出して、ゆっくり何回か歌ってみましょう。うまくいったら、前後のフレーズとつなげて、曲の流れの中でも歌えるか、たしかめます。
録音して聞きなおす
跳躍のところは、歌っているときの感じと、実さいに出ている音がちがうことがあります。スマホで録音して、上の音に届いているか、下の音がぼやけていないかを聞いてみましょう。
ことばをつけるのは、さいごに
跳躍の練習は、はじめは「ら」や「な」など、言いやすい音で行うのがおすすめです。ことばがつくと、発音にも気をとられて、音の高さに集中しにくくなるからです。音のきょりがつかめてきたら、さいごに歌詞のことばをもどして歌ってみましょう。
ことばをもどしたときに、また音がずれてしまうこともあります。そのときは、跳躍の上の音にくることばの母音だけで歌ってみると、口の形が決まり、音が取りやすくなることがあります。
曲の中で跳躍を生かす
跳躍は、歌の見せどころ
大きく音が飛ぶところは、作曲した人が、気持ちの高まりや、場面のかわり目をあらわしていることもあるところです。むずかしいところと思うだけでなく、「ここは歌の見せどころ」と考えると、前向きな気持ちで練習しやすくなります。
上の音をのばしすぎない
上の音に届いたことにほっとして、その音だけを強く長く歌ってしまうことがあります。跳躍のあとも、フレーズは続いています。上の音のあとの音まで、ひとつの流れとして歌いきることを意識してみてください。
お子様と練習するときのポイント
体の動きをつかう
お子様には、手をつかって音の高さをあらわすと、わかりやすくなります。低い音ではおなかのあたり、高い音では頭の上のあたりに手を動かしながら歌うと、音が飛ぶ感じを目で見て感じられます。
できたところをほめる
上の音に届いたとき、下の音がきれいだったときなど、少しでもよくなったところを見つけて、ほめてあげてください。「さっきより近くなったね」のひとことが、つぎの練習へのやる気につながります。
高い音・低い音にむりをしない
跳躍の練習では、自分にとって高すぎる音や低すぎる音を、何回も出してしまいがちです。届かない音は、曲の高さ(キー)を下げて練習するのもひとつの方法です。音域を少しずつ広げたい方は、こちらの記事も読んでみてください。歌の音域を広げる方法。高い音・低い音を少しずつのばす練習
のどがつかれたら、すぐに休みましょう。のどの痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 跳躍は、はなれた音へ大きく飛ぶメロディの動き
- 音が取れない原因のひとつは、つぎの音を頭の中で鳴らせていないこと
- 上がる跳躍は「上からとる」イメージで、あごを上げずに
- 下がる跳躍は、下の音をていねいに置き、息の流れを止めない
- 聞いてから歌う、あいだの音をうめる、サイレン、録音を練習にとり入れる
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
音が飛ぶところをきれいに歌えるようになると、歌の盛り上がりが、ぐっと伝わりやすくなります。練習してきた歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリにもチャレンジしてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、練習してきたところが伝わっているか、たしかめるきっかけにもなると思います。こどもの歌声グランプリ