倍音とは?声のひびきがゆたかに聞こえるわけを、やさしく
「倍音の多い声、ということばを聞いたけれど、倍音って何?」 「同じ高さで歌っているのに、人によって声の感じが違うのはなぜ?」
歌に関わる話をしていると、「倍音」ということばに出会うことがあります。少しむずかしそうに聞こえますが、じつは、わたしたちがふだん声を聞き分けているしくみと、深く関わっていることばです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。同じ曲を、同じ高さで歌っていても、ひとりひとりの声の感じはまったく違います。その違いを知る手がかりのひとつが、倍音です。
この記事では、倍音とは何か、なぜ声がゆたかに聞こえるのかを、できるだけやさしくまとめます。むずかしい計算や数字は使わず、一般的に知られている考え方だけをお話しします。
倍音とは?
1つの音には、たくさんの音がふくまれている
わたしたちが「ド」の音を聞いたとき、耳には「ド」の1つの音だけがとどいているように感じます。でも、じっさいには、その中に、もっと高い音がいくつもまざっています。
- いちばん下にある、音の高さを決めている音
- その上に重なっている、たくさんの高い音
いちばん下の音を「基音(きおん)」、上に重なっている音を「倍音(ばいおん)」といいます。
なぜ「倍」の音なの?
倍音ということばは、基音の2倍、3倍、4倍…というように、きまった関係の高さで音が重なっていることから、こうよばれています。
ただ、歌を楽しむうえで、このしくみをくわしくおぼえる必要はありません。「1つの声の中に、たくさんの音がかくれている」とわかっていれば、じゅうぶんです。
ふだんは1つの音として聞こえる
倍音は、ひとつひとつが別の音として聞こえるわけではありません。基音とまざりあって、1つの音として耳にとどきます。ですから、ふつうに聞いているだけでは、倍音があることに気づきにくいのです。
倍音と「音色」の関係
同じ高さでも、声が違って聞こえるわけ
ピアノとバイオリンで、同じ「ド」をひいたとします。高さは同じなのに、わたしたちはすぐに「これはピアノ」「これはバイオリン」と聞き分けられますよね。
この違いを生んでいるもののひとつが、倍音です。どんな倍音が、どれくらいの強さでふくまれているかによって、音の感じ(音色)がかわります。
人の声も同じです。同じ高さで歌っても、
- 明るく聞こえる声
- やわらかく聞こえる声
- 深く、あたたかく聞こえる声
というように、人によって違って聞こえるのは、声にふくまれる倍音のまざり方が、ひとりひとり違うからだと考えられています。
声の種類と倍音
ソプラノやテノール、アルトやバスなど、声の種類によって声の感じが違うのも、音の高さだけでなく、声の音色の違いが関わっています。声の種類については、こちらの記事でくわしく書いています。声楽の声の種類とは?ソプラノ・メゾソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バスのちがい
倍音が「ゆたかな声」と言われるのは?
ひびきのある声
「倍音の多い声」「倍音がゆたかな声」と言われる声は、
- 小さめの声でも、よくとおる
- ひびきがあって、聞いていて心地よい
- 広い会場でも、声がうしろまでとどく
といった印象をもたれることが多いです。
声は、のどにある声帯でつくられたあと、のどのおくや口の中、鼻のおくなどでひびきます。このひびきの中で、倍音のまざり方がかわっていきます。体の中の空間をうまくつかって歌えると、声にひびきが生まれ、ゆたかに聞こえやすくなります。
「多ければいい」というわけではない
ただし、倍音は「多ければ多いほどいい」というものではありません。
- やわらかい子守歌には、やさしい音色が合う
- 元気な歌には、明るくはっきりした音色が合う
というように、曲の気持ちに合った声の色があります。倍音のことを知るのは、「いい声」と「わるい声」を分けるためではなく、声にはいろいろな色があることを知るためだと考えると、楽しく向きあえると思います。
倍音を感じてみよう
「あ・い・う・え・お」で聞きくらべる
同じ高さのまま、「あー、いー、うー、えー、おー」と、母音だけをかえて声を出してみてください。高さはかわっていないのに、声の感じがかわって聞こえますよね。
これは、口の形や舌の位置がかわることで、声にふくまれる倍音のまざり方がかわるためだといわれています。母音の違いを聞き分けられるのも、倍音のおかげなのです。
ゆっくり口の形をかえてみる
「うー」から「いー」へ、ゆっくりと口の形をかえながら、同じ高さで声をのばしてみましょう。耳をすませていると、声の中で、高い音がすっと動いていくように聞こえることがあります。
静かな部屋で、小さな声でやると、気づきやすいかもしれません。聞こえなくても、気にしなくてだいじょうぶです。
倍音をつかった歌い方もある
世界には、倍音を目立たせて歌う、めずらしい歌い方もあります。モンゴルなどでは、1人で低い声と高い笛のような音を同時に聞かせる歌い方が伝わっています。動画などで聞いてみると、倍音のふしぎさを感じられると思います。日本でも、お寺のお経や、民謡の歌い方の中に、倍音がゆたかに聞こえるものがあるといわれます。いろいろな歌声に耳をかたむけてみると、声の色の幅広さにおどろくかもしれません。
歌の練習で意識したいこと
倍音をふやそうとして、特別な練習をする必要はありません。ふだんの発声練習の中で、次のようなことを大切にしていくと、声のひびきはかわっていきます。
力をぬいて歌う
のどや肩、あごに力が入ると、声がかたくなり、ひびきが出にくくなります。まずは、らくな姿勢で、力をぬいて声を出すことから始めましょう。
息の流れをとめない
息がとちゅうでとまったり、むりに押し出したりすると、声がふるえたり、かすれたりしやすくなります。息がゆったりと流れている中で声を出すと、ひびきがのりやすくなります。
明るさとやわらかさを、表情でかえる
声の明るさは、表情や口の形でもかわります。ほほえむような表情で歌うと、声が明るく聞こえやすくなります。声のトーンについては、こちらの記事も参考にしてください。声のトーンを明るくするには?表情と口の形でかわる、歌声のひびき
録音して聞いてみる
歌っている自分の耳には、体の中を伝わる音もまざって聞こえるため、ほかの人が聞く声とは違って聞こえるといわれます。録音して聞いてみると、自分の声の色に気づきやすくなります。
よくある質問
倍音は、生まれつきのもの?
声の音色には、声帯や体の形など、生まれもったものも関わっています。でも、口のあけ方、舌の位置、息のつかい方などによっても、声の聞こえ方はかわります。生まれつきだけで決まるものではなく、歌い方によってかわる部分もあると考えてよいと思います。
倍音が多い声は、歌が上手ということ?
倍音のまざり方は、声の色の違いです。歌が上手かどうかは、音程やリズム、ことばの伝え方、気持ちのこめ方など、いろいろなことで感じられるものです。倍音だけで、歌のよしあしが決まるわけではありません。
倍音は、目で見ることができる?
声をグラフのように表示するアプリなどで、倍音のようすを見られるものもあります。ただ、歌の練習で大切なのは、グラフの形より、自分の耳で聞いて「心地よい声か」を感じることです。興味のある方は、楽しむつもりでためしてみてください。
お子様に伝えるときは
倍音ということばは、お子様にはむずかしいかもしれません。
- 「声の中には、小さな音のおともだちがたくさんいるんだよ」
- 「同じドでも、ピアノと声では、色が違うね」
など、絵本のようなことばで伝えると、興味をもちやすくなります。いろいろな楽器の音を聞きくらべるのも、楽しい音あそびになります。
気をつけたいこと
ひびきのある声をめざして、むりに大きな声を出したり、のどをしめつけたりしないようにしましょう。のどがつかれたら、水をのんで休んでください。
歌ったあとに、のどの痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 倍音とは、1つの音の中に重なってふくまれている、高い音のこと
- いちばん下の音を基音、上に重なる音を倍音という
- 倍音のまざり方の違いが、声や楽器の音色の違いを生む
- 「倍音がゆたかな声」は、よくとおり、ひびきのある声と言われることが多い
- 倍音は多ければいいわけではなく、曲に合った声の色が大切
- 力をぬき、息を流して歌うことが、ひびきのある声への近道
倍音を知ると、人の声を聞くのがもっとおもしろくなります。自分の声の色を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の声のよさに気づくきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ