声のトーンを明るくするには?表情と口の形でかわる、歌声のひびき
「なんだか、歌声が暗く聞こえる」 「録音してみたら、声がこもっていて、楽しい歌なのに楽しそうに聞こえない」
歌を練習していると、こんなふうに感じることがあると思います。音程もリズムも合っているのに、なぜか声がしずんで聞こえる。そんなときは、声の「トーン」、つまり声の明るさや、ひびき方を見なおしてみるとよいかもしれません。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌声の明るさは、生まれつきの声だけで決まるものではなく、表情や口の形など、ちょっとしたくふうでかわることがあります。
この記事では、声のトーンを明るくするための考え方と、表情や口の形のくふう、おうちでできる練習をまとめました。お子様にも大人の方にも使える内容です。
声のトーンってなに?
明るい声と、暗い声のちがい
声のトーンとは、声の明るさや、色合いのようなものです。同じ高さの音を歌っても、明るくはなやかに聞こえる声もあれば、落ちついて、少し暗く聞こえる声もあります。
- 明るく聞こえる声:前にひびく、はっきりしている、軽やか
- 暗く聞こえる声:口の中にこもる、ぼんやりしている、重たい
どちらがよい、わるいということではありません。しっとりした歌や、さびしい気持ちの歌では、落ちついたトーンがぴったり合うこともあります。大切なのは、歌の気持ちに合わせて、トーンをえらべるようになることです。
トーンは「顔」と「口の中」でかわる
声は、のどで生まれて、口の中や顔のまわりでひびいて、外に出ていきます。そのため、顔の表情や、口の中の広さ、舌の位置などがかわると、声のひびき方もかわります。
つまり、トーンを明るくしたいときは、のどに力を入れるのではなく、顔と口のつかい方を見なおすのが近道になることが多いのです。
表情でかわる歌声
ほほを少し上げてみる
いちばんかんたんなのは、ほほを少し上げることです。にっこり笑うときのように、ほほの上のほうを、ふわっと持ち上げるイメージです。
ためしに、むすっとした顔で「あー」と声を出してから、にこっとした顔で「あー」と声を出してみてください。あとのほうが、声が明るく聞こえると感じる方が多いと思います。
ただし、口のはしを横に引きすぎると、声がうすく、平たくなることもあります。「歯を見せて笑う」より、「目とほほでほほえむ」くらいがちょうどよいです。
目を開いて、まゆを軽く上げる
目に力がなく、ぼんやりしていると、声もぼんやりしがちです。目をしっかり開いて、まゆを少しだけ上げると、顔全体が明るくなり、声も前に出やすくなります。
- 遠くのものを見つけたときの、「あっ」という顔
- うれしい知らせを聞いたときの顔
こうした顔をイメージすると、自然と表情が明るくなります。
鏡を見ながら歌ってみる
自分の表情は、思っているより動いていないものです。鏡の前で歌ってみると、「笑っているつもりだったのに、真顔だった」と気づくこともあります。
お子様の場合は、お父様・お母様が「にこにこ顔で歌ってみようか」と声をかけて、いっしょに鏡を見るのも楽しいと思います。歌に気持ちをこめる方法については、こちらの記事でもまとめています。歌に気持ちをこめるには?歌詞の読みこみ方と、表情・声の色のつけ方
口の形でかわる歌声
口の中を、たてに広げる
声を明るく、ひびかせるためには、口の中の広さも大切です。口を横に広げるより、たてに開けるイメージを持つと、声がこもりにくくなります。
- あくびをする前の、口の中がふわっと広がる感じ
- 指が2本くらいたてに入るくらいの開き方(むりのない範囲で)
あごに力を入れて大きく開けようとすると、かえって声がかたくなります。あごは力をぬいて、すとんと下におろすような感じです。
舌の先は、下の歯のうらに
舌がのどのおくに引っこむと、声がこもって、暗く聞こえやすくなります。舌の先を、下の前歯のうらに軽くつけておくと、口の中に空間ができて、声が前にひびきやすくなります。
最初はなかなかむずかしいので、「あー」とのばしながら、鏡で舌の位置をたしかめてみてください。
母音を明るく歌う
日本語の歌は、「あ・い・う・え・お」の母音がとても大切です。母音が暗くなると、歌全体のトーンも暗くなります。
- 「あ」:口の中をたてに広げて、明るく
- 「い」:口を横に引きすぎず、ほほを上げて
- 「う」:くちびるを前に出しすぎず、口の中は広く
- 「え」:あごをおろして、ひらたくならないように
- 「お」:口の中を丸く広げて、こもらないように
とくに「う」と「お」は、声がこもりやすい音です。口の中の広さをたもったまま歌うことを意識すると、トーンがそろいやすくなります。
姿勢と目線もトーンにかかわる
下を向くと、声も下がりやすい
楽譜や歌詞を見ながら歌うと、どうしても下を向きがちです。あごが下がって首が前に出ると、声も前に出にくくなります。歌詞を見るときは、楽譜を少し高く持つなど、顔が下がりすぎないようにくふうしてみてください。
目線は、少し遠くへ
目線を少し遠くに向けると、声も遠くにとどけようとする気持ちが生まれます。部屋の向こうのかべや、窓の外の景色など、目じるしを決めておくと歌いやすくなります。
お子様に伝えるときのくふう
ことばより、イメージで伝える
小さなお子様に「ほほを上げて」「口の中を広げて」と言っても、なかなか伝わりにくいものです。そんなときは、イメージしやすいことばにかえてみてください。
- 「うれしいことがあった顔で歌ってみよう」
- 「お口の中に、小さなたまごが入っているつもりで」
- 「遠くのおともだちに、とどけるように歌ってみよう」
お子様は、まねをするのがとても上手です。お父様・お母様が、にこにこした顔で先に歌ってみせると、自然と表情が明るくなることも多いです。
できたときに、すぐほめる
表情が明るくなったときや、声が前に出たときは、その場で「いまの声、明るかったね」と伝えてあげましょう。どんな顔で歌うと、どんな声になるのかを、お子様自身が感じられるようになります。
おうちでできる練習
笑顔で「ハミング」
口をとじて「んー」とハミングしながら、ほほを上げてみてください。鼻のあたりや、ほほの骨のあたりが、ビリビリとふるえる感じがあれば、声が顔のまわりでひびいているしるしです。
そのまま口を開けて、「んー、まー」と声を出すと、明るいひびきのまま声を出しやすくなります。
「笑い声」から歌に入る
「ふふっ」「ははっ」と軽く笑ってから、その声の明るさのまま、短いフレーズを歌ってみるのもおすすめです。笑い声は、自然とほほが上がり、声が前に出やすい状態になっています。
録音して聞きくらべる
ふつうの顔で歌ったときと、表情を明るくして歌ったときを、スマホで録音して聞きくらべてみましょう。自分の耳で、ちがいをたしかめることが、いちばんの練習になります。
- 同じフレーズを、2つの顔で歌う
- 「どちらが明るく聞こえるか」をメモする
- 1週間後に、もう一度聞きくらべる
トーンを明るくするときの注意
むりに高い声や、大きな声を出さない
「明るい声」を出そうとして、のどをしめたり、むりに高い声を出したりすると、のどをいためることがあります。明るさは、のどではなく、表情や口の中でつくるもの、と考えてください。
歌ったあとに、のどがひりひりする、声がかすれるといったときは、すぐに練習を休みましょう。痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
歌の気持ちに合わせる
どんな歌でも明るいトーンで歌えばよい、というわけではありません。さびしい歌、静かな歌、子守歌などは、やわらかく落ちついたトーンのほうが、歌の気持ちが伝わることもあります。
- 楽しい歌、元気な歌:明るく、前にひびく声で
- しっとりした歌:やわらかく、あたたかい声で
- 悲しい歌:少しおさえた、落ちついた声で
「明るくする方法」を知っておくと、反対に「おさえたいとき」のトーンもえらびやすくなります。
先生にも聞いてみる
声の明るさのとらえ方は、歌のジャンルや、先生の考え方によってもちがいます。教室に通っている方は、「もう少し明るく聞こえるようにしたい」と先生に相談してみると、その人の声に合ったアドバイスをもらえると思います。
まとめ
- 声のトーンは、声の明るさや色合いのこと。表情や口の中のつかい方でかわる
- ほほを少し上げる、目を開いてまゆを軽く上げると、声が明るく聞こえやすい
- 口は横ではなく、たてに開けるイメージで。舌の先は下の歯のうらに
- 「う」「お」は、こもりやすいので、口の中の広さをたもつ
- 下を向かず、目線を少し遠くに向ける
- 笑顔のハミングや、笑い声から歌に入る練習がおすすめ
- のどに力を入れない。痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
- 歌の気持ちに合わせて、トーンをえらぶ
表情や口の形を少しかえるだけで、歌声の印象はぐっとかわることがあります。くわしく教わりたい方は、近くの歌の教室もさがしてみてください。歌の教室さがし明るい歌声で歌えるようになったら、こどもの歌声グランプリで、だれかに聞いてもらうのもよいと思います。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の声のよさを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ