ヴォカリーズとは?ことばのない歌の練習と、その楽しみ方
「ヴォカリーズって、どういう意味?」 「先生に、ヴォカリーズで練習しましょうと言われたけれど、何をするのかな」
声楽のレッスンや、クラシックのコンサートで、「ヴォカリーズ」ということばを聞くことがあります。ヴォカリーズとは、かんたんに言うと、歌詞をつけずに、母音だけで歌う歌や練習のことです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、ヴォカリーズとは何か、なぜ歌の練習で使われるのか、おうちでできるヴォカリーズの練習のやり方、そして、曲としてのヴォカリーズの楽しみ方までを、やさしくまとめます。声楽を習っている方にも、歌が好きでこれから習ってみたい方にも、読んでいただけたらうれしいです。
ヴォカリーズとは?
歌詞をつけずに、母音で歌うこと
ヴォカリーズは、もとはフランス語のことばです。歌詞を使わずに、「ア」などの母音だけで、メロディーを歌うことをいいます。
ヴォカリーズということばは、大きく分けて2つの意味で使われます。
- 声の練習として、母音だけで歌う練習曲や練習
- 作曲家が、はじめから歌詞なしで歌うように書いた曲
どちらも「ことばのない歌」という点は同じです。声楽のレッスンで「ヴォカリーズ」と言われたときは、たいてい、1つめの「練習」の意味です。
発声練習とのちがい
「アーアーアー」と音階を歌う発声練習も、ことばを使わないという点では、ヴォカリーズに近いものです。ただ、発声練習は、短い形をくりかえすことが多いのに対して、ヴォカリーズは、ひとまとまりのメロディーを「曲」として歌うことが多い、というちがいがあります。
なぜ、ヴォカリーズで練習するの?
声そのものに集中できる
ことばのある歌では、発音や、ことばの意味、子音の入れ方など、気にすることがたくさんあります。ヴォカリーズでは、ことばを考えなくてよいぶん、声の出し方や、息の流れ、声のひびきに集中できます。
声をなめらかにつなぐ練習になる
子音がないので、音から音へ、声をとぎれさせずにつなぐ練習がしやすくなります。声をなめらかにつないで歌うことを「レガート」といい、声楽ではとても大切にされています。ヴォカリーズは、レガートを身につけるのに向いた練習です。
母音をそろえる練習になる
母音だけで歌うと、高い音と低い音で、母音のひびきがかわってしまうことに気づきやすくなります。どの高さでも、同じような母音のひびきで歌えるように練習することで、歌全体がまとまって聞こえやすくなります。
声楽でよく使われるヴォカリーズの本
声楽のレッスンでは、ヴォカリーズのための練習曲の本がよく使われます。たとえば、ジュゼッペ・コンコーネの練習曲集は、もともと歌詞のない練習曲で、母音や階名で歌うことが多い本です。
ほかにも、いろいろな作曲家が、歌の練習のためのヴォカリーズを書いています。どの本を使うかは、先生の考え方や、生徒の声によってちがいます。
おうちでできるヴォカリーズの練習
まずは、よく知っている歌で
ヴォカリーズの本を持っていなくても、練習はできます。まずは、よく知っている歌のメロディーを、歌詞のかわりに「ア」だけで歌ってみましょう。ゆっくりした、なめらかなメロディーの歌がやりやすいと思います。
練習の流れ
- 口をとじて「んー」とハミングで、メロディーをなぞる
- 「ウ」や「オ」など、口の形をつくりやすい母音で歌う
- なれてきたら、「ア」で歌う
- いくつかの母音をかえて、同じメロディーを歌いくらべる
ハミングからはじめると、のどに力が入りにくく、声のひびきを感じやすくなります。どの母音からはじめるとよいかは、人によってちがうので、先生に聞いてみるのもよいと思います。
音と音のあいだを大切に
ヴォカリーズでは、音と音のあいだで、声がとぎれないことを大切にします。1つの音が終わってから次の音を出すのではなく、息を流しつづけたまま、次の音へうつるイメージで歌ってみましょう。
長くのばす音で、声をたしかめる
メロディーの中の長くのばす音では、声がゆれたり、細くなったりしていないかをたしかめましょう。長くのばす練習については、こちらの記事でくわしく書いています。ロングトーンの練習。息を長く、声をまっすぐのばすコツ
録音して聞く
自分のヴォカリーズを録音して聞いてみると、次のようなことに気づきやすくなります。
- 音と音のあいだで、声がとぎれていないか
- 高い音で、母音のひびきがかわっていないか
- 息つぎで、メロディーが止まっていないか
気をつけたいこと
ヴォカリーズは、ことばがないぶん、同じ母音で長く歌いつづけることになります。のどがつかれやすい方もいるので、はじめは短い時間からにしましょう。高い音で苦しくなったら、むりをせず、その日はそこまでにしてください。痛みやかすれが何日もつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
曲としてのヴォカリーズを楽しむ
ラフマニノフの「ヴォカリーズ」
曲としてのヴォカリーズで、いちばんよく知られているのが、ロシアの作曲家ラフマニノフの「ヴォカリーズ」です。歌曲集の中の1曲として書かれた、歌詞のない歌です。
ゆったりとした、少しさびしげで美しいメロディーが、とぎれることなくつづいていきます。歌だけでなく、バイオリンやチェロ、ピアノ、オーケストラなど、いろいろな楽器の演奏でも親しまれています。
ラヴェルの「ハバネラ形式のヴォカリーズ」
フランスの作曲家ラヴェルにも、「ハバネラ形式のヴォカリーズ」という、歌詞のない歌があります。ハバネラという、スペインやキューバに関わりのある、おどりのリズムが使われている曲です。ラフマニノフの「ヴォカリーズ」とは、またちがったふんいきを楽しめます。
聞きくらべの楽しみ
同じヴォカリーズでも、歌い手によって、テンポや声の色、息つぎの場所がちがいます。何人かの演奏を聞きくらべてみると、「同じ曲なのに、こんなにちがうんだ」とおどろくかもしれません。ことばがないぶん、声そのもののちがいが、よくわかります。
また、歌の演奏と、楽器の演奏を聞きくらべてみるのもおすすめです。楽器で弾かれたヴォカリーズを聞くと、「声も楽器のように、なめらかにつなげるんだ」というイメージがわきやすくなります。
曲としてのヴォカリーズを歌ってみたいときは
先生に相談してから
ラフマニノフの「ヴォカリーズ」は、とても美しい曲ですが、長い音をなめらかにつなぐ力や、息を長くつかう力が必要です。高い声で書かれた曲なので、歌える高さかどうかも大切です。歌ってみたいと思ったら、まず先生に相談してみましょう。声の高さに合わせて、調をかえた楽譜が使われることもあります。
練習曲で、土台をつくる
いきなり大きな曲に取り組むより、コンコーネなどの練習曲や、短いヴォカリーズで、声をなめらかにつなぐ練習をしておくと、曲としてのヴォカリーズにも取り組みやすくなります。
ことばがないからこそ、気持ちをこめる
ことばのない歌は、「何を歌っているのか」が伝わりにくいように思えるかもしれません。でも、ことばがないからこそ、声のひびきや、強弱、テンポのゆれだけで、気持ちを伝えることができます。「ここは静かに」「ここで気持ちが高まる」など、自分なりに曲のイメージを考えながら歌ってみてください。
お子様とヴォカリーズ
お子様の場合、ことばのある童謡や、子どもむけの歌をたくさん歌うことが、何より大切な時期もあります。そのうえで、知っている歌を「ア」や「ラ」だけで歌ってみる遊びは、メロディーにしっかり耳をすます、よいきっかけになります。むりのない高さで、楽しく、短い時間で取り入れてみてください。
まとめ
- ヴォカリーズとは、歌詞をつけずに、母音だけで歌う歌や練習のこと
- 声の練習としてのヴォカリーズと、曲としてのヴォカリーズがある
- 声そのものに集中でき、なめらかにつなぐ練習や、母音をそろえる練習になる
- おうちでは、よく知っている歌を、ハミングや母音で歌うところからはじめられる
- 曲としては、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」や、ラヴェルの「ハバネラ形式のヴォカリーズ」が知られている
- 歌ってみたい曲があるときは、先生に相談してから取り組む
- のどの痛みやかすれがつづくときは、お医者さんに相談する
ことばのない歌は、声そのものの美しさを感じられる、すてきな世界です。声をなめらかにつなぐ練習を、先生に見てもらいたいときは、こちらのページで教室をさがしてみてください。歌の教室さがし練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ