外郎売で発声練習。はじめての方へ、読み方のコツとすすめ方
「発声練習に、外郎売(ういろううり)がいいと聞いたけれど、どう読めばいいの?」 「長くてむずかしそう。はじめてでも、できるのかな」
外郎売は、役者さんやアナウンサー、声優をめざす方などが、発声練習につかうことで知られているせりふです。歌を習っている方のなかにも、ことばをはっきりさせたいときに、外郎売を読む方がいます。
ただ、むかしのことばで書かれていて、とても長いので、さいしょはどこから手をつければいいのか、まよいやすいものです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌でも、ことばがはっきり聞こえることは、とても大切だと感じています。
この記事では、外郎売を発声練習につかいたい、はじめての方に向けて、外郎売とはどんなものか、読み方のコツ、毎日のすすめ方、気をつけたいことをまとめます。歌の滑舌ぜんたいのことは、こちらの記事にまとめています。歌の滑舌をよくする練習。ことばがはっきり伝わる歌い方
外郎売とは?どんなせりふなの?
歌舞伎で生まれた、むかしのせりふ
外郎売は、江戸時代の歌舞伎で生まれたせりふです。「歌舞伎十八番」とよばれる演目のひとつとして知られています。
「外郎」というのは、むかしから売られている薬の名前です。せりふの中では、薬売りが、この薬のいわれや、のんだあとの様子を、とても早く、いきおいよく語っていきます。
はじまりは、「拙者親方と申すは」ということばです。ここから、薬の説明がつづき、とちゅうからは、言いにくいことばや、にたことばのくりかえしが、たくさん出てきます。
なぜ発声練習につかわれるの?
外郎売が発声練習によくつかわれるのは、つぎのような理由があるからです。
- 口や舌をいろいろな形で動かすことばが、たくさん入っている
- 「ぱ行」「が行」「さ行」など、いろいろな音が出てくる
- 長いので、息のつかい方の練習にもなる
- 語るように読むので、声の強さや高さに変化をつけやすい
- むかしから多くの人に読まれていて、教室でもつかわれることがある
早口ことばは短いものが多いですが、外郎売は物語のように長く続きます。そのため、ことばの練習だけでなく、声を出しつづける力や、気持ちをこめて語る力の練習にもつながります。
はじめる前に知っておきたいこと
ぜんぶ読めなくても、だいじょうぶ
外郎売は、とても長いせりふです。はじめから終わりまで読むと、数分から10分ほどかかることが多く、なれないうちは、とちゅうで息が苦しくなったり、口がつかれたりします。
はじめての方は、ぜんぶを一度に読もうとしなくてだいじょうぶです。はじめの数行だけ、または、気になるところだけを、少しずつ読んでいきましょう。
文章を手もとに用意する
外郎売の文章は、本やインターネットなどで読むことができます。ただ、のせているところによって、ことばや区切りが少しちがうことがあります。
教室で習う方は、先生がつかっている文章に合わせるのがおすすめです。ひとりで練習する方は、読みがな(ふりがな)がついている文章をえらぶと、読みやすくなります。
意味を少し知っておく
むかしのことばなので、意味がわからないところもたくさんあると思います。すべてを知る必要はありませんが、「どんな場面のせりふか」「いま何の話をしているのか」を大まかに知っておくと、ぐっと読みやすくなります。
たとえば、はじめのほうは、薬売りが自分の親方や、薬のいわれを話している場面です。とちゅうからは、薬をのむと舌がよくまわる、という流れで、言いにくいことばがつづきます。こうした流れがわかると、ただ早く読むのではなく、語るように読めるようになります。
外郎売の読み方のコツ
1. まずは、ゆっくり読む
はじめは、早く読もうとしないことが大切です。一つひとつの音を、ていねいに出すことを心がけましょう。
- 口を大きめに動かす
- ことばの終わりまで、しっかり言いきる
- まちがえても止まらず、そのまま続ける
ゆっくり、はっきり読めるようになってから、少しずつ速さを上げていきます。早く読めることより、聞きとりやすく読めることを大切にしてください。
2. 区切りを決めて、息つぎの場所に印をつける
長いせりふなので、どこで息をすうかを決めておくと、読みやすくなります。文章に、えんぴつで「/」などの印をつけておきましょう。
さいしょは、短めに区切ってかまいません。なれてきたら、少しずつ一息で読む長さをのばしていきます。むりに長く読もうとすると、のどに力が入りやすくなるので、苦しくなる前に息をすうようにしましょう。
3. 言いにくいところだけを、ぬき出して練習する
外郎売の中には、「武具馬具(ぶぐばぐ)」のように、にた音がつづいて言いにくいところがいくつもあります。こうしたところは、そこだけをぬき出して、何回かくりかえしてみましょう。
- まず、とてもゆっくり言う
- 音を一つずつ区切って言う
- なれたら、ふつうの速さで言う
- 前後の文とつなげて読む
言いにくいところを先に練習しておくと、通して読むときに、つっかえにくくなります。
4. お腹から声を出すイメージで
外郎売は、もともと舞台で、遠くのお客さんにとどけるせりふです。小さな声でぼそぼそ読むより、少し前に向かって声をとばすイメージで読むと、発声練習としての効果を感じやすくなります。
ただ、どならないように気をつけましょう。大きな声を出すことより、ひびきのある声で、はっきり読むことを意識してください。
5. 気持ちをこめて語る
なれてきたら、薬売りになったつもりで読んでみましょう。お客さんに「この薬はすごいんですよ」と話しかけるような気持ちで読むと、声の高さや強さに、自然と変化が生まれます。
歌でも、ことばに気持ちがのると、聞く人に伝わりやすくなります。外郎売は、その練習にもぴったりです。
毎日のすすめ方の例
1日5分から10分くらいで
外郎売の練習は、長い時間やるより、毎日少しずつ続けるほうが、取り組みやすいと思います。たとえば、こんな流れです。
- 1分:口をほぐす(口を大きく開けたり、とじたりする)
- 1分:ハミングや「あー」で、軽く声を出す
- 3分:その日に練習する数行を、ゆっくり読む
- 2分:言いにくいところだけを、くりかえす
- 1分:もう一度、通して読む
1週間ごとに、読むところをふやす
1週目ははじめの数行、2週目はそのつづき、というように、少しずつ読むところをふやしていきます。前に練習したところも、ときどき読み返すと、わすれにくくなります。
ぜんぶを読めるようになるまでの時間は、人によってちがいます。あせらず、自分のペースで進めてください。
録音して聞いてみる
ときどき、スマホで自分の読み方を録音してみましょう。
- ことばの終わりが、小さくなっていないか
- 早く読みすぎて、音がつぶれていないか
- 息つぎで、とぎれとぎれになっていないか
自分で読んでいるときにはわからないことに、気づきやすくなります。
歌の練習とのつなげ方
歌う前の声出しとして
外郎売の一部を読んでから歌うと、口や舌が動きやすくなったと感じる方もいます。歌う前の声出しとして、数行だけ読んでみるのもよいでしょう。
歌詞を語るように読む練習へ
外郎売で語るように読むことになれてきたら、歌の歌詞も、同じように声に出して読んでみましょう。メロディーをつけずに歌詞を語ると、ことばの意味や、強く言いたいところが見えてきます。
お子様にとっては、外郎売はむずかしいことばが多いかもしれません。小さなお子様には、短い早口ことばや、歌あそびから入るのもおすすめです。おうちでできる発声の練習は、こちらにまとめています。おうちでできる子どもの発声練習。5分でできる遊びのような練習法
気をつけたいこと
のどがつかれたら、休む
早く、大きな声で読みつづけると、のどがつかれることがあります。読んでいて、のどがいがいがしたり、声がかすれてきたりしたら、その日はそこでやめて、のどを休めましょう。
- 水を少しずつのむ
- 部屋がかわいていたら、加湿する
- つかれているときは、小さめの声で読む
痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
速さをきそわない
外郎売を早く読めると、つい「もっと速く」と思いたくなります。でも、聞いている人にことばが伝わらなければ、練習の意味がうすれてしまいます。速さより、ことばのはっきりさを大切にしましょう。
文章のあつかいに気をつける
外郎売そのものはむかしのせりふですが、本やサイトにのっている文章には、それぞれの書き手が読みがなや区切りをつけていることがあります。コピーしてくばったり、ほかの場所にのせたりするときは、のせているところのきまりをたしかめてください。
まとめ
- 外郎売は、江戸時代の歌舞伎で生まれた、薬売りのせりふ
- いろいろな音や言いにくいことばが入っていて、発声練習につかわれている
- はじめは、ぜんぶ読もうとせず、数行ずつゆっくり読む
- 息つぎの場所に印をつけ、言いにくいところはぬき出して練習する
- 毎日5分から10分くらい、少しずつ読むところをふやす
- 速さより、はっきり聞こえることを大切にする
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
外郎売で、ことばをはっきり語る練習をつづけていると、歌のことばも聞きとりやすくなっていくと思います。練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌のよいところや、ことばの伝わり方を知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ