大人の声楽の発表会で歌う曲のえらび方。自分の声に合う1曲を見つけるために
「声楽の発表会に出ることになったけれど、何を歌えばいいのかわからない」 「好きな曲はあるけれど、自分に歌えるのか心配」
大人になってから声楽を習いはじめた方にとって、発表会の曲えらびは、楽しみでもあり、なやみどころでもあると思います。声楽の曲はとてもたくさんあり、日本の歌、イタリアの歌、ドイツの歌、オペラの歌と、えらぶはばが広いぶん、迷ってしまいますよね。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。発表の場では、曲えらびがうまくいくと、練習の時間も本番も、ずっと楽しくなります。
この記事では、大人の声楽の発表会で歌う曲の選び方にしぼってお話しします。発表会の準備や衣装、当日の緊張については、別の記事にまとめています。ここでは、自分の声に合う1曲を見つけるための考え方を、順番に見ていきましょう。
発表会の曲えらびで、大人がなやみやすいこと
「歌いたい曲」と「歌える曲」がちがう
大人の方の曲えらびで、いちばん多いなやみが、これだと思います。あこがれの曲があっても、いまの声では高すぎたり、長すぎたりすることがあります。
- 好きな曲だけれど、高い音が出るか不安
- 先生にすすめられた曲が、あまりピンとこない
- 有名な曲を歌って、くらべられるのがこわい
どれも、とても自然な気持ちです。大切なのは、「歌いたい」と「歌える」のちょうどよいところを、先生といっしょにさがしていくことです。
発表会は「いまの自分」を見てもらう場
発表会は、コンクールのように点数をつける場ではないことがほとんどです。いまの自分の声で、気持ちよく歌える曲をえらぶことが、いちばんのポイントになります。むずかしい曲に挑戦することだけが、よい曲えらびではありません。
声楽の発表会の曲えらび 5つのポイント
1 音域が、自分の声に合っているか
まずたしかめたいのは、曲のいちばん高い音と、いちばん低い音です。
- いちばん高い音が、むりなく出せるか
- いちばん低い音が、きちんと聞こえる声で出せるか
- 高い音が何度も出てくるか、1回だけか
高い音が1回だけなら、練習で何とかなることもあります。でも、高い音がくりかえし出てくる曲は、本番で声がつかれやすくなります。
声楽の歌曲には、同じ曲でも高い声用、中くらいの声用、低い声用など、いくつかの高さの楽譜が出ていることがあります。好きな曲が高すぎるときは、低めの楽譜がないか、先生に聞いてみてください。
2 曲の長さが、ちょうどよいか
発表会では、1人あたりの時間が決まっていることが多いです。時間の目安は、教室や発表会によってちがいます。
はじめての発表会なら、短めの曲のほうが、最後まで集中して歌いやすいと思います。長い曲は、体力や息の配分もむずかしくなります。まずは短い曲で「最後まで気持ちよく歌いきる」経験をすることが、次の発表会への自信につながります。
3 ことば(言語)を、どうするか
声楽の曲は、日本語、イタリア語、ドイツ語、フランス語など、いろいろなことばで書かれています。
- 日本語の歌 ことばの意味がそのまま伝わり、気持ちをこめやすい
- イタリア語の歌 母音がはっきりしていて、声楽の発声を練習しやすいといわれる
- ドイツ語・フランス語の歌 発音になれるまで、少し時間がかかることが多い
はじめての発表会なら、日本語の歌か、声楽を習いはじめた人がよく練習するイタリアの歌から考える方が多いようです。ドイツの歌曲に興味がある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。リートとは?ドイツ歌曲の楽しみ方と、はじめて歌うときのコツ
4 いまの実力より「少しだけ上」をえらぶ
かんたんすぎる曲だと、練習していてもものたりなくなります。むずかしすぎる曲だと、本番まで不安が続いてしまいます。
目安は、「いまの実力より、少しだけ上」です。全体はむりなく歌えて、1か所か2か所だけ「ここをがんばろう」と思えるところがある曲。そんな曲だと、練習のやりがいもあり、本番でも安心して歌えます。
5 自分が「好き」と思えるか
最後に、とても大切なのは、その曲を好きになれるかどうかです。発表会までには、同じ曲を何度も何度も練習します。好きな曲なら、練習の時間も楽しくなりますし、本番でも自然と気持ちがこもります。
先生にすすめられた曲でも、歌詞を読んだり、ほかの人の演奏を聞いたりするうちに、だんだん好きになっていくこともあります。
大人の発表会で歌われることが多い曲のタイプ
日本の歌曲
日本の歌曲は、ことばが伝わりやすく、大人の発表会でもよく歌われます。たとえば、滝廉太郎の「荒城の月」や、山田耕筰の「この道」などは、長く歌いつがれてきた曲です。
日本の歌曲は、ゆったりした曲が多く、ことばをていねいに歌う練習にもなります。歌詞の意味をよく味わってから歌うと、聞いている人にも気持ちが伝わりやすくなります。
イタリアの古い歌
声楽を習いはじめた方が練習することが多いのが、イタリアの古い時代の歌です。旋律がきれいで、曲の長さも短めのものが多く、発表会でもよく歌われています。
また、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」のように、オペラの中の歌でありながら、ゆったりとして歌いやすいといわれる曲もあります。
ドイツの歌曲
シューベルトの「野ばら」のように、短くて親しみやすいドイツの歌曲もあります。ドイツ語の発音は少し練習が必要ですが、曲によっては、はじめての方でも楽しんで歌えます。
オペラのアリアは、先生と相談して
オペラのアリアにあこがれる方も多いと思います。ただ、アリアの中には、長くて、高い音がたくさん出てくる曲もあります。いまの声に合ったものがあるかどうか、先生とよく相談してからえらぶのがおすすめです。
ここであげた曲は、ほんの一例です。どの曲が合うかは、声の高さや声の色、これまでの練習によって一人ひとりちがいます。
曲えらびのすすめ方
候補を2〜3曲あげてみる
いきなり1曲にしぼらなくてもだいじょうぶです。気になる曲を2〜3曲あげて、先生に相談してみましょう。
- 曲名と、作曲した人の名前
- なぜその曲が気になったのか
- 心配なところ(高い音、ことば、長さなど)
こうしたことを伝えると、先生もアドバイスしやすくなります。
先生の前で、一度歌ってみる
候補の曲は、レッスンで一部分だけでも歌ってみるのがおすすめです。実際に声に出してみると、「思ったより歌いやすい」「この高さは、まだきびしい」など、楽譜を見ているだけではわからないことに気づけます。
録音して、聞きくらべる
候補の曲を少しずつ歌って、スマホで録音してみましょう。あとで聞きくらべると、どの曲が自分の声に合っているか、わかりやすくなります。声がいちばん自然にひびいている曲が、いまの自分に合っている曲かもしれません。
練習期間から逆算する
発表会までの期間も、曲えらびの大事なポイントです。新しいことばの曲や、長い曲は、なれるまでに時間がかかります。本番までの時間が短いときは、すでに練習したことのある曲や、なじみのある曲をえらぶのも、よい方法です。
曲えらびで気をつけたいこと
のどにむりをさせない
高すぎる曲や、強い声を長く出しつづける曲を、むりに練習しつづけると、のどがつかれてしまいます。練習のあとに声がかすれる、のどが痛いといったことが続くときは、曲の高さを見直したり、練習の量をへらしたりしましょう。痛みやかすれが続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
ほかの人とくらべすぎない
発表会では、ほかの生徒さんと同じ曲になることもあります。でも、同じ曲でも、歌う人によってひびきも表現もちがいます。くらべるより、「自分らしく歌えるか」を大切にしてみてください。
声楽の発声のきほんを見なおしたい方は、こちらの記事も参考になると思います。声楽の発声のきほん。はじめての人がおさえたいコツと練習
まとめ
- 発表会の曲は、「歌いたい」と「歌える」のちょうどよいところをさがす
- 音域、曲の長さ、ことばを、先にたしかめる
- いまの実力より「少しだけ上」の曲がちょうどよい
- 日本の歌曲、イタリアの古い歌、ドイツ歌曲など、タイプから考えてみる
- 候補を2〜3曲あげて、先生の前で歌ってみる
- 録音して聞きくらべると、自分の声に合う曲が見えてくる
- のどにむりをさせず、痛みやかすれが続くときはお医者さんに相談する
曲えらびは、発表会の準備のなかでも、いちばんわくわくする時間のひとつです。いっしょに曲をえらんでくれる先生をさがしたい方は、こちらのページから近くの教室を見てみてください。歌の教室さがし練習してきた歌を、発表会のほかにも聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもあります。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ