歌うと鼻声になるのはなぜ?原因と直し方、おうちでできる練習
「歌うと、なぜか鼻声になってしまう」 「録音を聞いたら、鼻にかかったような声で、すっきりしない」
こんななやみを持つ方は、じつはとても多いです。話すときはふつうなのに、歌うときだけ鼻声になる、という方もいます。歌の鼻声には、いくつかの原因があり、その多くは、口の中の形や、息の通り道のつかい方とかかわっています。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌の声は、ちょっとした体のつかい方で、きこえ方が大きくかわることがあります。
この記事では、歌で鼻声になる原因と、鼻声の直し方の練習を、おうちでできる形でまとめました。お子様の歌が鼻にかかって聞こえて気になっているお父様・お母様にも、読んでいただけたらうれしいです。
歌の鼻声とは、どんな声?
鼻にかかった声と、ひびきのある声はちがう
歌の鼻声とは、息や音が鼻のほうへ多く流れて、こもったような、つまったような声に聞こえる状態のことです。「ふにゃっとした声」「ねばっとした声」と感じる方もいます。
いっぽうで、歌の先生から「鼻のあたりにひびかせて」と言われることもあります。これは、顔の前のほうに声があつまるような、明るいひびきのことを言っている場合が多く、鼻声とはちがいます。
- 鼻声:鼻のほうに音がにげて、こもって聞こえる
- ひびきのある声:顔の前のほうがふるえるような感じで、遠くまでとどく
この2つは、ことばがにているので、まちがえやすいところです。
自分でたしかめる方法
鼻声かどうかは、かんたんにたしかめることができます。
- 「アー」と、らくな高さで声をのばす
- 声を出したまま、指で鼻を軽くつまむ
- 声がかわるかどうかを聞く
鼻をつまんでも声があまりかわらなければ、息は主に口から出ています。鼻をつまんだとたんに声がこもったり、ふさがったようにかわったりするときは、鼻のほうへ音がたくさん流れているかもしれません。
ただし、「マ・ナ・ン」などの音は、もともと鼻を通る音です。この音で声がかわるのは自然なことなので、「ア・イ・ウ・エ・オ」でためしてみてください。
歌うと鼻声になる原因
上あごの奥がさがっている
口の中の上がわをさわると、前のほうはかたく、奥のほうはやわらかくなっています。この奥のやわらかいところは、鼻への通り道を開けたり、しめたりする役目をしています。
歌うときに、ここがだらんとさがっていると、鼻への道が開いたままになり、音が鼻へにげやすくなります。歌の鼻声で、いちばんよくある原因のひとつです。
舌の奥がもり上がっている
舌の奥が、うしろのほうでもり上がっていると、口の中のせまいところができて、声が口から出にくくなります。そのぶん、音が鼻のほうへまわりやすくなります。
がんばって歌おうとするときや、低い音を太く出そうとするときに、舌の奥に力が入りやすいです。
口があまり開いていない
口をあまり開けずに歌うと、口から出られる音が少なくなります。とくに「イ」や「ウ」の音で、口が横にひっぱられたり、とじぎみになったりすると、鼻声に聞こえやすくなります。
高い音で、鼻にたよってしまう
高い音を出そうとするとき、のどをしめないように、知らないうちに鼻のほうへ声をにがしている場合があります。高いところだけ鼻声になる方は、この形になっているかもしれません。
鼻づまりなど、体の調子
かぜや、花粉の季節などで鼻がつまっているときは、声のきこえ方がかわることがあります。このときの声は、上で書いた「鼻へ音がにげる声」とは、また少しちがう聞こえ方をします。
鼻づまりがなかなかよくならないときや、いつも鼻声が気になるときは、自分で原因を決めつけずに、耳鼻咽喉科などのお医者さんに相談してください。体の調子がととのってから練習すると、声の変化もわかりやすくなります。
鼻声の直し方 おうちでできる練習
ここからは、歌の鼻声を直すための練習を紹介します。どれも短い時間でできるものです。一度にぜんぶやらなくてもだいじょうぶなので、やりやすいものからためしてみてください。
あくびの形をおぼえる
あくびをするとき、口の奥が上にもち上がって、広くなる感じがあると思います。この形は、上あごの奥のやわらかいところがもち上がった形です。
- 口を軽く開けて、あくびをするように息をすう
- 口の奥がひんやりして、広がる感じをたしかめる
- その形のまま、小さく「アー」と声を出す
大きなあくびの形のままだと、声がこもってしまうことがあります。「あくびのはじまり」くらいの、軽い広がりをめやすにしてください。
鼻をつまんで「アー」と歌う
さきほどのたしかめ方を、そのまま練習にします。
- 鼻を軽くつまむ
- 「アー」と声をのばす
- 声がこもらないように、口の奥を少し広げてみる
- 鼻をつまんだときと、はなしたときで、声がかわらなくなるのをめざす
はじめは「ア」だけで、なれてきたら「エ」「オ」「イ」「ウ」とふやしていきます。かんたんな歌のフレーズを、鼻をつまんだまま歌ってみるのもよい練習です。
「ン」から「ア」へ切りかえる
- 口をとじて「ンー」とハミングする(このときは鼻を通るのが正しい)
- そのまま口を開けて「アー」にかえる
- 「ア」になったとき、声が口から前へ出ていく感じをたしかめる
「ンー」と「アー」のちがいを体で感じると、鼻を通る声と、口から出る声を、自分で切りかえやすくなります。
「ガ・カ」で口の奥を動かす
「ガ」や「カ」の音を出すとき、舌の奥と上あごの奥がふれて、はなれます。この動きをくりかえすと、口の奥がよく動くようになります。
- 「ガ・ガ・ガ・ガ」と、はっきり言う
- 「カ・カ・カ・カ」と、息をしっかり出して言う
- 「ガー」「カー」と、声をのばしてみる
口の奥がもち上がる感じがつかめたら、そのまま歌のフレーズにつなげてみてください。
舌の位置をととのえる
舌の先を、下の前歯のうらがわに、軽くつけて歌ってみましょう。舌の先が前にあると、舌の奥がもり上がりにくくなります。
鏡で口の中を見ながら「アー」と言ってみて、舌の奥が見えにくいくらいもり上がっていないか、たしかめるのもおすすめです。舌に力が入っているときは、あごをやさしくなでて、ゆるめてから声を出します。
母音だけで歌ってから、歌詞にもどす
歌詞で歌うと、ことばにつられて鼻声になることがあります。そんなときは、メロディを「ア」だけ、または歌詞の母音だけで歌ってみましょう。
たとえば「さくら」なら「アウア」と歌います。母音で鼻声が出なくなったら、同じ口の形をのこしたまま、歌詞にもどします。
鼻声をなくそうとしすぎないことも大切
鼻声を直そうとして、口の奥を広げすぎたり、のどに力を入れたりすると、こんどは声が暗くこもったり、のどがつかれたりすることがあります。
- 「マ・ナ・ン」などの音は、鼻を通ってよい
- 明るいひびきまで、なくさなくてよい
- 「少しすっきりした」と感じたら、それで十分な日もある
歌の声に、たった1つの正解があるわけではありません。曲のふんいきや、歌うジャンルによっても、ちょうどよい声はかわります。気になるときは、歌の先生に聞いてみると、自分の声に合ったアドバイスをもらえることが多いです。
先生に見てもらいたい方は、近くの教室やオンラインの教室をさがしてみてください。歌の教室さがし
お子様が鼻声で歌っているとき
小さなお子様は、口の奥のつかい方がまだよくわかっていないので、鼻声で歌うことがよくあります。ほとんどの場合、成長や練習のなかで、少しずつかわっていきます。
お父様・お母様が気になったときは、こんなことをためしてみてください。
- 「鼻声だよ」と言うより、「お口を大きくして歌ってみようか」と声をかける
- あくびのまねっこや、「ガガガ」と言うあそびを、ゲームのように楽しむ
- 鏡の前で、いっしょに口を開けて歌ってみる
- うまくできたときに、「すっきりした声だね」とほめる
注意されてばかりだと、歌うこと自体がいやになってしまうこともあります。楽しい気持ちのまま、少しずつためしていくのがいちばんです。
また、お子様がいつも鼻がつまっているように見えるときや、口をあけて息をしていることが多いときは、歌の練習とは別に、耳鼻咽喉科などで相談してみると安心です。
口の開け方については、こちらの記事もあわせて読んでみてください。「のどを開く」ってどういうこと?声がらくに出るからだの使い方
練習のときに気をつけたいこと
- 1回の練習は、5分から10分くらいの短い時間で
- 大きな声を出しつづけない
- のどが痛い、かすれるなどを感じたら、その日はやすむ
- 録音して、練習の前とあとを聞きくらべる
録音してみると、自分の耳で聞いているときより、鼻声かどうかがよくわかります。少しずつ声がすっきりしていくのを聞くと、練習を続ける力にもなります。
のどの痛みやかすれが何日も続くときは、むりに練習を続けずに、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 歌の鼻声は、音が鼻のほうへにげて、こもって聞こえる状態
- 鼻をつまんで「アー」と歌うと、鼻声かどうかをたしかめられる
- 原因は、上あごの奥がさがる、舌の奥がもり上がる、口が開いていない、などが多い
- あくびの形、鼻をつまんで歌う、「ン」から「ア」、「ガ・カ」の練習がおすすめ
- 鼻声をなくそうとしすぎず、明るいひびきはのこしてよい
- 鼻づまりが続くときや、のどの痛みが続くときは、耳鼻咽喉科などに相談する
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