歌の母音と子音をきれいに。ことばがはっきり伝わる歌い方のコツ
「一生けんめい歌っているのに、歌詞が聞きとりにくいと言われる」 「ことばをはっきりさせようとすると、声のひびきがなくなってしまう」
歌を練習していると、こんななやみにぶつかることがあります。ことばをはっきり伝えたいけれど、声のきれいさもたもちたい。このふたつを両立させるカギになるのが、母音と子音のあつかい方です。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。いろいろな歌を聞いてきて、歌詞がすっと耳に入ってくる歌には、母音と子音のバランスがととのっているという共通点があると感じています。
この記事では、歌で母音を意識するコツと、子音の発音をととのえるコツにしぼってお話しします。早口ことばのような滑舌の練習とは少しちがい、「歌の中で、ことばをどうひびかせるか」を考えていきます。
歌の中の母音と子音ってなに?
母音は「あ・い・う・え・お」
日本語の音は、ほとんどが「母音」と「子音」の組み合わせでできています。
- 母音:あ・い・う・え・お
- 子音:「か」の k、「さ」の s、「た」の t など、母音の前につく音
たとえば「か」は「k+あ」、「そ」は「s+お」です。ローマ字で書いてみると、わかりやすいと思います。
歌では、母音が長くのびる
話すときは、母音も子音も同じくらいの長さで言います。でも歌では、のばす音のほとんどが母音です。
「さくら」を2拍ずつのばして歌うと、「さぁーくぅーらぁー」となりますよね。のびているのは「あ・う・あ」の母音で、子音の「s・k・r」は、それぞれの音のはじめに、ほんの一瞬だけ出ます。
つまり歌では、母音が声のひびきをつくり、子音がことばの形をつくっている、と考えるとわかりやすくなります。
滑舌とのちがい
滑舌は、口や舌をすばやく動かして、ことばをはっきり言う力のことです。この記事でお話しするのは、そこから一歩すすんで、「のばす母音をどうひびかせるか」「子音をどのタイミングで出すか」という、歌ならではのあつかい方です。滑舌そのものの練習は、こちらの記事にまとめています。歌の滑舌をよくする練習。ことばがはっきり伝わる歌い方
歌で母音を意識するコツ
5つの母音のひびきをそろえる
歌で母音を意識するとき、まず大切なのは、5つの母音のひびきをできるだけそろえることです。
話し声では、「あ」は大きく、「い」は横に平たく、「う」は口をすぼめて…と、母音ごとに口の形がかなりかわります。そのまま歌うと、「あ」だけひびいて、「い」や「え」はうすっぺらく聞こえることがあります。
- 「い」「え」は、口を横に引きすぎない
- 「う」は、くちびるをすぼめすぎず、口のおくを広くたもつ
- どの母音でも、口のおく(のどのあたり)は、あくびの前のように少し広げておく
口の前の形はかえても、口のおくの広さはなるべくかえない。これを意識すると、母音がかわっても声のひびきがつながりやすくなります。
母音だけで歌ってみる
歌詞を母音だけにして歌う練習は、とても効果があります。
たとえば「さくら」ということばなら、
- 歌詞:さ・く・ら
- 母音だけ:あ・う・あ
と、母音だけをつなげて歌ってみます。子音がなくなるので、声がとぎれずに、なめらかにつながっているかがよくわかります。
母音だけでなめらかに歌えたら、もとの歌詞にもどして歌ってみましょう。声のつながりがよくなっていることが多いです。
のばす音で母音をかえない
長くのばす音の途中で、母音がかわってしまうことがあります。
- 「あー」がだんだん「おー」に近くなる
- 「いー」がのばすうちに「えー」っぽくなる
のばしているあいだ、同じ母音をたもつことを意識しましょう。録音して聞くと、自分では気づかなかった変化がわかりやすくなります。
二重母音に気をつける
「あい」「おう」のように、母音が2つ続くところでは、どちらの母音でのばすかを決めておくと、きれいに聞こえます。
たとえば「あい(愛)」を長くのばすときは、「あー」で長くのばして、さいごに軽く「い」をつけることが多いです。はやく「い」にうつると、声が平たく聞こえやすくなります。
歌で子音の発音をととのえるコツ
子音は「短く、はっきり」
子音は、ことばの形をつくる大事な音です。でも、長く出しすぎると、そのぶん母音が短くなり、声がとぎれて聞こえます。
子音は、短く、でもはっきり出す。これが基本です。
子音は「拍の前」に出す
歌では、母音を拍(リズムの点)にぴったり合わせるために、子音を拍の少し前に出すことがあります。
たとえば「さくら」の「さ」を拍の頭で歌うとき、「s」を拍の少し前に出して、拍のところで「あ」が鳴るようにします。こうすると、リズムがおくれて聞こえにくくなります。
はじめはむずかしく感じるかもしれませんが、ゆっくりのテンポで「子音を先に、母音を拍に」と意識してみてください。
聞こえにくい子音を少しだけ強める
子音の中には、歌うと聞こえにくくなるものがあります。
- 「は行」の h:息の音なので、うすくなりやすい
- 「さ行」の s:高い音では消えやすい
- 「か行」「た行」の k・t:やわらかく歌う曲では、ぼやけやすい
こうした子音は、ほんの少しだけ強めに、はっきり出すと、歌詞が伝わりやすくなります。ただし、強くしすぎると、そこだけ目立ってしまうので、録音してバランスをたしかめましょう。
曲の気分に合わせて子音の強さをかえる
元気な曲では、子音をはっきり強めに出すと、はずむような感じが出ます。いっぽう、しずかな子守歌のような曲では、子音をやわらかめにすると、やさしい感じになります。
子音の強さは、いつも同じでなくてよいのです。曲の気分に合わせて、少しずつかえてみてください。
「ん」と小さい「っ」の歌い方
「ん」はひびきをのこして
「ん」は、日本語の歌でとくに気をつけたい音です。口をとじて「ん」を長くのばすと、声がこもって聞こえることがあります。
- 「ん」は、のばしすぎず、次の音の直前で軽く入れる
- 「ん」でのばすときは、鼻のあたりにひびきを感じるようにする
たとえば「さんぽ」なら、「さぁー」を長くのばして、「ぽ」の直前に「ん」を短く入れるイメージです。
小さい「っ」は、音を止めるだけ
「きって」「まって」のような小さい「っ」は、声を出さずに、一瞬だけ音を止める音です。ここで息をすってしまったり、「つ」と言ってしまったりしないように気をつけましょう。
「を」と「お」、「は」と「わ」
「を」は、歌では「お」と同じように歌うことが多いです。また、「ぼくは」の「は」は、「わ」と歌います。楽譜の歌詞を見て、読み方を先にたしかめておくと安心です。
おうちでできる練習
練習1 ゆっくり読む
歌詞を、メロディをつけずに、ゆっくり読んでみましょう。母音をのばすように読むと、歌に近い感じになります。
練習2 母音だけで歌う
先にお話ししたように、歌詞を母音だけにして歌います。声がなめらかにつながるかをたしかめましょう。
練習3 子音を足して歌う
母音だけで歌えたら、子音をもどして、もう一度歌います。子音を「短く、拍の前に」を意識してみてください。
練習4 録音して聞く
スマホで録音して、歌詞を知らない人が聞いても、ことばがわかるかをたしかめます。家族に聞いてもらって、「どこが聞きとりにくかったか」を教えてもらうのもおすすめです。
お子様と練習するとき
お子様と練習するときは、「あ・い・う・え・お」で歌うあそびから始めると、楽しく取り組めます。むずかしい説明よりも、「今日は『あ』だけで歌ってみよう」と声をかけるくらいがちょうどよいと思います。
よくあるつまずき
ことばを大事にしすぎて、声がとぎれる
歌詞をはっきり伝えようとして、1つ1つの音を区切ってしまうと、メロディのつながりがなくなります。ことばは子音で形をつくり、声は母音でつなげる、という役わり分けを思い出してみてください。
母音を大事にしすぎて、ことばがぼやける
反対に、声のひびきばかりを気にしていると、子音がうすくなって、何を歌っているのかわかりにくくなります。録音を聞いて、ことばが聞きとれるかを、ときどきたしかめましょう。
まとめ
- 歌では、のばす音のほとんどが母音。母音が声のひびきをつくる
- 歌で母音を意識するときは、口のおくの広さをそろえて、ひびきをつなげる
- 母音だけで歌う練習で、声のつながりをたしかめる
- 子音は「短く、はっきり、拍の前に」が基本
- 聞こえにくい子音は少しだけ強め、曲の気分に合わせて強さをかえる
- 「ん」や小さい「っ」は、ていねいにあつかう
母音と子音のバランスは、自分ではわかりにくいこともあります。先生に聞いてもらいながら練習したい方は、通いやすい教室をさがしてみてください。歌の教室さがしことばがはっきり伝わるようになった歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ