鼻濁音とは?日本の歌をやわらかく歌うコツと、練習のしかた
「合唱の練習で、『そこは鼻濁音で』と言われたけれど、よくわからなかった」 「童謡を歌うとき、が行の音がかたく聞こえてしまう」
日本の歌を歌っていると、鼻濁音(びだくおん)ということばを耳にすることがあります。でも、ふだんの会話であまり意識しないので、「鼻濁音とは何か」がよくわからない方も多いと思います。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。日本語の歌では、ことばのひびきがやわらかいだけで、歌ぜんたいの印象がかわることがあります。
この記事では、鼻濁音とは何か、歌のどこでつかうことが多いのか、そして、やわらかく出すためのコツと練習のしかたを、やさしくまとめました。
鼻濁音とは
が行の音を、鼻にぬけるように出す
鼻濁音とは、「が・ぎ・ぐ・げ・ご」の音を、鼻にぬけるように、やわらかく出す発音のことです。
ふつうの「が」は、舌のおくで息を一度止めて、ぱっとはなすように出します。少しかたく、強い音です。いっぽう鼻濁音の「が」は、息を止めずに、鼻のほうへ音をぬきながら出します。「ん」と「が」が、まざったような音です。
本などでは、鼻濁音を「か゜」のように、半濁点(まる)をつけて書くことがあります。
歌で大切にされてきた理由
鼻濁音は、ことばの音をやわらかく、なめらかにしてくれます。そのため、童謡や唱歌、合唱、日本の歌曲などでは、むかしから大切にされてきました。
- ことばのつながりが、なめらかになる
- が行の音が、まわりの音から飛び出しにくくなる
- しずかな曲や、やさしい曲の雰囲気をこわしにくい
アナウンサーの話し方などでも、鼻濁音をつかうことがあります。
つかわない人がいても、まちがいではない
鼻濁音は、地域や世代によって、ふだんの会話でつかう人とつかわない人がいます。「自分は鼻濁音をつかっていなかった」という方も、少なくありません。それは、まちがいでも、はずかしいことでもありません。
歌で鼻濁音をつかうかどうかも、曲や先生、合唱団の考え方によってちがいます。「歌の表現のひとつ」として、知っておくとよい、くらいに考えてみてください。
歌で鼻濁音をつかうところの目安
つかうことが多いところ
- 単語のとちゅうや、おわりのが行(たとえば「かがみ」「うさぎ」「たまご」「ながい」)
- 「〜が」の「が」(たとえば「空が青い」「花が咲く」)
助詞の「が」は、歌詞の中にとてもよく出てきます。ここをやわらかくするだけでも、歌のひびきがかわります。
つかわないことが多いところ
- 単語のはじめのが行(たとえば「がっこう」「ぎんいろ」「ごはん」)
- 外国から来たことば(たとえば「ギター」「ゲーム」)
- 数の「五」(たとえば「じゅうご」)
- 「ぎらぎら」のように、音をくりかえすことば
合わさったことばは、まよいやすい
2つのことばが合わさってできたことばは、あとの部分のはじめが、もとの単語のはじめなので、鼻濁音にしないことがあります。たとえば「こうとう」と「がっこう」が合わさった「こうとうがっこう」の「が」などです。
ただ、ここは人や辞書によって考え方がちがうところもあります。まよったときは、アクセント辞典などでしらべたり、先生にたしかめたりするのがおすすめです。歌詞の中でまよったところには、楽譜にしるしをつけておきましょう。
鼻濁音の出し方のコツ
「ん」をつけてから「が」
いちばんわかりやすいのは、「が」の前に、小さく「ん」をつける方法です。
- 「ん」とハミングするように声を出す
- そのまま口をあけて「が」とつなげる
- 「んが」「んぎ」「んぐ」「んげ」「んご」とゆっくり言う
- なれてきたら、「ん」を短く、目立たないようにする
さいごは、「ん」が聞こえないくらい自然に、やわらかい「が」になるのが目標です。
鼻に手をあてて、たしかめる
鼻のわきに、軽く指をあてて「が」と言ってみましょう。鼻濁音のときは、鼻のあたりが、ふるえるような感じがします。ふつうの「が」とくらべてみると、ちがいがわかりやすくなります。
舌のおくの動きを感じる
鼻濁音は、舌のおくを、うわあごのおくにそっとつけたまま、音を鼻へぬいてから、はなすように出します。ぐっと強くおしつけるのではなく、軽くふれるくらいのイメージです。
「な行」に近づきすぎない
鼻にかけようとしすぎると、「が」が「な」のように聞こえてしまうことがあります。あくまで「が」の音であることを、わすれないようにしましょう。録音して聞いてみると、たしかめやすくなります。
おうちでできる練習
1 ことばで練習する
まずは、歌わずに、ことばを読んで練習します。
- かがみ
- うさぎ
- たまご
- みぎ
- ながれ
- ひがし
ふつうの「が」と鼻濁音の「が」を、交互に言ってみると、ちがいがよくわかります。
2 短い文で練習する
つぎに、助詞の「が」が入った短い文で練習してみましょう。
- 空が青い
- 鳥が鳴く
- 風が吹く
- 月がきれい
「が」のところで、声がとぎれずに、なめらかにつながっているかを意識してみてください。
3 メロディーにのせる
ことばでできるようになったら、ゆっくりした音階に「んが・んが・んが」とのせて歌ってみましょう。そのあと、練習している歌の、が行が出てくるところだけを、ゆっくり歌ってみます。
4 歌詞に、しるしをつける
歌詞を見て、鼻濁音にするところに、小さなまるをつけておくと、歌うときにわすれにくくなります。先生に「ここは鼻濁音にする?」とたしかめてから書きこむと安心です。
お子様と練習するときは
小さなお子様には、むずかしいことばで説明するより、「ここは、やさしい『が』で歌ってみようか」と声をかけてみてください。お父様・お母様がやわらかく歌ってみせて、まねっこしてもらうと、自然に身につきやすくなります。できなくても、むりに直す必要はありません。
うまくいかないときのなやみ
どうしても「な」に聞こえてしまう
鼻にぬく音が長すぎると、「な」や「んな」のように聞こえやすくなります。「ん」の時間をできるだけ短くして、すぐに「が」へうつるように意識してみてください。はじめはゆっくり、なれてきたら、ふつうの速さで言ってみましょう。
鼻にかかっているのか、自分ではわからない
自分の声は、自分では聞きとりにくいものです。スマホで録音して、ふつうの「が」と、鼻濁音のつもりの「が」を、ならべて聞いてみてください。ちがいが小さいときは、鼻に指をあてる方法とあわせてためしてみると、わかりやすくなります。それでもわからないときは、レッスンで先生に聞いてもらうのがいちばんです。
速い曲だと、まにあわない
テンポの速い曲では、鼻濁音を意識する時間がみじかくなります。まずはゆっくりのテンポで、が行の出てくるところだけをくりかえし練習しましょう。体がおぼえてくると、速い曲でも自然にできるようになっていきます。むりにすべてを鼻濁音にしようとせず、ゆっくりの曲から少しずつとりいれていくのもよい方法です。
方言やふだんの話し方とちがって、なれない
ふだん鼻濁音をつかわない方にとっては、はじめは少しふしぎな感じがするかもしれません。歌のときだけ、ことばの「よそゆきの服」に着がえるような気持ちで、たのしんでみてください。ふだんの話し方を、むりにかえる必要はありません。
鼻濁音とあわせて意識したいこと
ことばぜんたいを大切に
鼻濁音は、ことばをていねいに歌うための、ひとつの方法です。が行の音だけでなく、歌詞ぜんたいのことばを大切にすると、歌の伝わり方がかわってきます。童謡のことばを大切にする歌い方は、こちらの記事でもしょうかいしています。童謡を上手に歌うコツ。「ことば」を大切にすると歌はかわる
母音と子音のバランス
鼻濁音にばかり気をとられると、ほかの音がおろそかになることもあります。母音をしっかりひびかせ、子音をはっきり伝えることも、あわせて意識してみてください。歌の母音と子音をきれいに。ことばがはっきり伝わる歌い方のコツ
のどに力を入れない
鼻濁音を出そうとして、のどや鼻のまわりに力が入りすぎることがあります。つかれたら休み、むりをしないようにしましょう。声のかすれや痛みがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 鼻濁音とは、が行の音を、鼻にぬけるようにやわらかく出す発音
- 単語のとちゅうやおわり、助詞の「が」でつかうことが多い
- 単語のはじめ、外国から来たことば、数の「五」などでは、つかわないことが多い
- 地域や世代でつかわない人もいて、まちがいではない。歌の表現のひとつとして知っておく
- 「んが」から練習し、ことば、短い文、メロディーの順にすすめる
- まようところは、辞典や先生でたしかめる
やわらかいことばで歌えるようになったら、その歌声をだれかに聞いてもらうのもよいと思います。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、日本の歌のことばのひびきを、どう聞いてもらえるかを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ