バスの発声練習。ひくい声を深く、楽にひびかせるコツ
「バスのパートになったけれど、ひくい音になると声がかすれてしまう」 「ひくい声を出そうとすると、のどをおしつけているような感じがする」
声楽や合唱でバスを歌っている男性の方の中には、こんなふうになやむ方もいます。ひくい声は、出そうとすればするほど、のどに力が入りやすいものです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、声楽のバスにしぼって、発声練習のやり方をまとめました。男性の低音の練習で気をつけたいこと、ひくい声を深く、楽にひびかせるための練習、そして先生に習うときのポイントまでお話しします。バスの声は、むりにおし出すものではなく、体の中でゆったりとひびかせるものです。そのイメージを、いっしょにつかんでいきましょう。
声楽のバスの声の特ちょう
男性の声の中で、いちばんひくい声
声楽では、男性の声を高いほうから、テノール、バリトン、バスと分けることが多いです。バスは、その中でいちばんひくい声です。オペラでは、王さまやおじいさん、おごそかな役などをうけもつことが多く、宗教曲や合唱では、全体の土台をささえる大切なパートです。
声の種類のちがいについては、こちらの記事でもくわしくまとめています。声楽の声の種類とは?ソプラノ・メゾソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バスのちがい
「ひくい」だけでなく「深さ」が大切
バスの声でよく言われるのが、「深い声」「やわらかく、ゆたかな声」です。ただ音がひくいだけでなく、ひびきに広がりがあることが大切にされます。
この深さは、のどを下におしつけて作るものではありません。体の力がぬけて、息がゆったり流れているときに、しぜんに生まれてくるものです。
バスの方にも、高い音の練習は必要
バスだから、ひくい音だけ練習すればいい、というわけではありません。曲の中には、ある程度高い音も出てきます。ひくい音と、まん中の音、少し高い音が、なめらかにつながることも、バスの練習の大切な目あてです。
ひくい声でつまずきやすい理由
のどを下におしつけてしまう
ひくい音を出そうとすると、あごを引きすぎたり、のどの下のほうに力を入れたりしがちです。すると、声がつぶれたように聞こえたり、のどがすぐにつかれたりします。
ひくい声は、「下へおしこむ」のではなく、「下にひろがる」イメージのほうが、楽に出やすくなります。
声を太く作ろうとしてしまう
「バスらしい太い声を出さなきゃ」と思うあまり、わざと声を太くしようとする方もいます。でも、作った太さは、こもった声になりやすく、ことばも聞きとりにくくなります。
まずは、自分のしぜんな声のまま、ひくい音にむかっていくことが大切です。
息が足りなくなる
ひくい音は、高い音にくらべて、息がたくさんいると感じる方もいます。声帯がゆったりふるえるため、息のつかい方が合っていないと、とちゅうで息が足りなくなったり、声がかすれたりすることがあります。
ひくい音をむりに出しつづける
いまの自分にはまだ出しにくい音を、毎日くりかえし出そうとすると、のどに負担がかかります。ひくい音は、少しずつ広がっていくものと考えて、あせらないようにしましょう。
発声練習をはじめる前に
体をほぐす
肩や首、あご、背中がかたいと、ひくい声はひびきにくくなります。歌う前に、肩をゆっくり回したり、首をやさしく左右にたおしたりして、体をほぐしましょう。あくびをするように口を大きくあけてみるのも、あごの力をぬくのに役立ちます。
立ち方をととのえる
足を肩はばくらいにひらき、体重を足のうらぜんたいにのせます。ひざはピンとのばさず、少しゆるめておきます。頭は上から糸でつられているようなイメージで、あごを引きすぎないようにしましょう。
まん中の音からはじめる
いきなりいちばんひくい音から練習するのではなく、話し声に近い、楽に出せる高さからはじめます。そこから少しずつ下へおりていくほうが、のどに負担がかかりにくくなります。
ひくい声を深く、楽にひびかせる練習
1 ため息の声で、力をぬく
「はぁー」と、ため息をつくように、楽な高さから少しひくいほうへ、声をすべりおろしてみましょう。がんばって声を出すのではなく、息といっしょに声がもれ出るくらいの感じです。
ひくい声は、力をぬいたときのほうが、しぜんに出てきやすいものです。まずは、この「楽な感じ」を体でおぼえることからはじめます。
2 ハミングで、胸のひびきを感じる
口をとじて、「んー」とハミングをします。楽な高さから少しずつ音を下げていき、胸に手をあてて、ひびきを感じてみましょう。ひくい音になるほど、胸のあたりがふるえるのを感じやすくなります。
このとき、むりに胸にひびかせようとしなくてだいじょうぶです。「感じられたらいいな」くらいの気持ちで続けてみてください。
3 「オ」や「ウ」の母音でおりていく
ハミングになれてきたら、口をあけて「オー」や「ウー」でおりていく練習をします。この2つの母音は、口の中の空間がたてに広がりやすく、ひくい音でもひびきを作りやすい母音です。
- ドレミファソファミレドのように、ゆっくり上がっておりる
- ソファミレドのように、上からおりてくる
- 1回ごとに、半音ずつ下げていく
いちばんひくいところで声がかすれそうになったら、そこでやめて、また楽な高さにもどりましょう。
4 口の中は「たて」に広く
ひくい音で声がこもるときは、口を横に広げすぎていないか、見直してみましょう。口の中を、たてに少し広げるようなイメージを持つと、ひびきが深くなりやすくなります。
鏡を見ながら、あごが前につき出ていないか、口が横にひきつっていないかをたしかめると、自分のくせに気づきやすくなります。
5 ことばをのせて歌う
母音でひびきがつかめてきたら、短いことばをのせてみます。たとえば「まめ」「もみじ」「よる」など、口を大きく動かしすぎずに言えることばがおすすめです。ことばがついても、さきほどの深いひびきがのこっているかを、耳でたしかめてみましょう。
6 ひくい音から、まん中の音へつなげる
バスの練習では、ひくい音だけでなく、ひくい音からまん中の音へ、なめらかにつなげる練習も大切です。「オー」で、ひくめの音からゆっくり上がっていき、とちゅうで声の色がいきなりかわらないように気をつけます。
かわり目で声がひっくりかえりそうなときは、声を少し軽くして通りぬけるようにすると、楽になることが多いです。
7 録音して聞きかえす
練習したら、スマホで録音して聞いてみましょう。自分で歌っているときは深く聞こえていても、録音するとこもって聞こえることがあります。反対に、楽に出したつもりの声が、いちばんよくひびいていることもあります。
練習のときに気をつけたいこと
1回の練習は、短めにする
ひくい声の練習は、思っている以上にのどを使います。1回の練習は短めにして、つかれを感じたら休みましょう。毎日少しずつ続けるほうが、長い時間まとめて練習するよりも、のどにやさしいです。
出ない音を、むりに出そうとしない
いちばんひくい音は、日によって出やすさがかわります。出にくい日は、そこまで下げなくてもかまいません。むりにしぼり出すと、のどをいためる原因にもなります。
のどの痛みやかすれが続くときは
練習のあとにのどがつかれたら、声を休め、水をのむなどしてのどをいたわりましょう。痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
声楽のバスのレッスンで習うこと
声のタイプは、先生といっしょに見つける
ひくい声が出るからといって、かならずしもバスに向いているとはかぎりません。バリトンのほうが合っている方もいます。声のタイプは、先生といっしょに、時間をかけて見つけていくものです。はじめから決めつけず、いまの声をていねいにそだてていきましょう。
練習曲は、むりのない音域から
レッスンでは、いまの声に合った練習曲から少しずつ取り組むことが多いです。ひくい音がたくさん出てくる曲に、いきなり挑戦するのではなく、楽に歌える音域の曲で、ひびきのつかみ方を身につけていきます。
先生えらびで見ておきたいこと
- 男性の低い声の指導になれているか
- 声のタイプを、決めつけずに見てくれるか
- のどに負担をかけない練習をすすめてくれるか
- できているところも、ことばにして伝えてくれるか
体験レッスンを受けて、「この先生なら続けられそう」と感じられるかどうかを、大切にしてください。
まとめ
- バスは男性の中でいちばんひくい声。「ひくさ」だけでなく「深さ」が大切
- ひくい声は、下へおしこむのではなく、下にひろがるイメージで
- 声を太く作ろうとせず、しぜんな声のまま練習する
- ため息の声、ハミング、「オ」「ウ」の母音で、少しずつおりていく
- ひくい音とまん中の音を、なめらかにつなげる練習もする
- 練習は短めに。痛みやかすれが続くときは耳鼻科などのお医者さんに相談する
バスの深い声は、すぐに身につくものではありませんが、楽に声を出すことを続けていくうちに、少しずつひびきがゆたかになっていきます。ひとりでの練習に不安があるときは、声楽の先生にみてもらうと安心です。通いやすい教室は、こちらからさがせます。歌の教室さがし練習してきた歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもあります。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、いまの声のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ