コンクールや発表会で、キーを変えて(移調して)歌ってもいい?
「この曲、とても好きだけれど、いちばん高い音がどうしても苦しい」 「コンクールで、キーを下げて歌ってもいいのかな」
歌いたい曲が決まっても、楽譜のままの高さでは、声に合わないことがあります。そんなとき、「キーを変えて歌うのはルール違反なのでは」と、心配になる方も多いと思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。曲えらびや楽譜の準備のときに、「この高さのままでいいのか」は、多くのお父様・お母様や、歌を習う方がなやむところだと感じています。
この記事では、コンクールや発表会で移調して歌ってもいいのか、声楽の移調楽譜の考え方、確かめておきたいことをまとめます。カラオケのキー設定ではなく、楽譜の移調にしぼってお話しします。
移調とは?
曲全体の高さを、そのまま上げ下げすること
移調(いちょう)とは、曲のメロディーや伴奏を、形をかえずに、全体の高さだけを上げたり下げたりすることです。
たとえば、楽譜がハ長調(ドからはじまる調)で書かれている曲を、全体を少し下げて歌うと、メロディーの形は同じまま、低い高さで歌えるようになります。
「原調」とは
作曲した人が、はじめに書いた調のことを「原調(げんちょう)」といいます。コンクールの要項で「原調で歌うこと」と書かれているときは、作曲者が書いたもとの高さで歌うという意味です。
キーを変えると、何がかわる?
移調すると、メロディーの形はかわりませんが、曲の感じが少しかわることがあります。
- 高くすると、明るく、はなやかに聞こえやすい
- 低くすると、落ちついて、やわらかく聞こえやすい
声に合った高さで歌うことで、むりなく、気持ちをこめて歌いやすくなるのが、移調のよいところです。
コンクールで移調してもいい?
答えは「要項によってちがう」
コンクールで移調してもいいかどうかは、コンクールごとに決まりが違います。いちばん大切なのは、そのコンクールの要項(応募のきまり)を、しっかり読むことです。
要項には、たとえば次のような書き方がされていることがあります。
- 「原調で歌うこと」
- 「移調可」
- 「調は自由」
- 課題曲について、決められた楽譜や版で歌うこと
何も書かれていないときや、読んでもよくわからないときは、自分で決めてしまわずに、主催しているところに問い合わせてみるのが安心です。
声楽のコンクールでの考え方
声楽のコンクールでは、曲の種類によって考え方が違うことがあります。
- 日本歌曲やイタリア歌曲、ドイツ歌曲など 声の高さに合わせて移調して歌うことが、ふだんからよくある
- オペラのアリア もとの調で歌うことが多い
これは一般的な傾向で、コンクールや部門によって違います。かならず要項で確かめてください。
童謡やポップスのコンクールでは
童謡や、ジャンル自由のコンクールでは、お子様の声に合わせてキーを変えてもよいとしているところもあります。ただ、課題曲がある場合や、決められた伴奏音源をつかう場合は、自由に変えられないこともあります。
発表会では
教室の発表会では、先生が生徒さんの声に合わせて、高さを決めてくれることが多いです。気になるときは、早めに先生に相談しておきましょう。発表会は、コンクールのようなきびしい決まりがないことも多いので、いまの声で気持ちよく歌える高さをえらびやすい場です。ほかの生徒さんと同じ伴奏の方にお願いする場合は、楽譜をわたす時期も先生に聞いておくと安心です。
声楽の移調楽譜の見つけ方
「高声用」「中声用」「低声用」の楽譜
声楽の歌曲集では、同じ曲集が「高声用」「中声用」「低声用」のように、高さ違いで出版されていることがあります。
- 高声用 ソプラノやテノールなど、高い声の人向け
- 中声用 メゾソプラノやバリトンなど、まん中の声の人向け
- 低声用 アルトやバスなど、低い声の人向け
楽器店や楽譜をあつかうお店で、表紙や説明に書かれている「声の種類」を見てえらびましょう。どの楽譜を買えばいいか迷ったら、先生に聞いてみるのがいちばんです。
子どもの歌の楽譜の手に入れ方については、こちらの記事にまとめています。子どもの歌の楽譜はどこで手に入る?楽譜集のえらび方と、コピーのきまり
先生に移調してもらうとき
ちょうどいい高さの楽譜がないときは、先生や伴奏の方が、楽譜を書きかえてくれることもあります。楽譜の書きかえやコピーには著作権のきまりが関わることがあるので、どうするのがよいか、先生や出版社に確かめておくと安心です。
移調するときに確かめたいこと
いちばん高い音と、いちばん低い音
キーを下げると、高い音は楽になりますが、低い音がさらに低くなります。キーを上げると、その反対です。
- いちばん高い音が、むりなく出せるか
- いちばん低い音が、聞こえる声で出せるか
曲の中のいちばん高い音と、いちばん低い音の両方を、歌って確かめてみましょう。
曲のいちばん大事なところ
その曲で、いちばん気持ちをこめたいところが、声のいちばん出しやすい高さにくるかも見てみてください。高い音ばかりに気をとられず、曲全体を通して、気持ちよく歌えるかどうかが大切です。
一度決めたら、早めに練習をはじめる
キーを決めたら、その高さで練習をつづけることが大切です。本番の少し前にキーを変えると、音をとりなおすのがたいへんになります。曲えらびのときに、高さも合わせて決めておくのがおすすめです。
課題曲の練習のすすめ方は、こちらの記事も参考にしてください。コンクールの課題曲の練習のすすめ方。楽譜をもらってから本番までの流れ
伴奏や音源の準備
ピアノ伴奏の場合
ピアノ伴奏で歌うときは、伴奏の方にも、移調した楽譜をわたす必要があります。調が変わると、ピアノでひく音もすべて変わるため、伴奏の方の練習にも時間がかかります。キーを決めたら、できるだけ早く伝えましょう。
伴奏音源をつかう場合
伴奏音源で歌うときは、音源のキーと、歌う楽譜のキーが同じかどうかを、かならず確かめてください。音源によっては、いくつかのキーが用意されているものもあります。
アプリなどでキーを変えた音源をつかうときは、コンクールの要項で、音源のきまりもあわせて確かめておくと安心です。
動画で応募するとき
オンラインの動画審査では、とり直しができる分、高さが合っていないことに、あとから気づくこともあります。とる前に、通しで何回か歌って、むりなく歌える高さかを確かめておきましょう。
よくある質問
移調すると、審査で不利になる?
移調してもよいとされているコンクールでは、決まりの中で移調すること自体が、それだけで不利になるとはかぎりません。審査で見られるのは、声の出し方や音程、ことばの伝え方、曲の気持ちの表し方など、歌全体であることが多いです。むりな高さで苦しそうに歌うより、声に合った高さで、のびのびと歌うほうが、よさが伝わりやすいと考えられます。
半音だけ下げる、ということもできる?
できます。移調は、半音ずつ細かく上げ下げすることができます。「あと少しだけ下がれば楽なのに」というときは、半音や、全音(半音2つ分)だけ変えることもよくあります。どれくらい変えるかは、先生といっしょに、実際に歌ってみて決めるのがおすすめです。
申しこみのときに、キーを書く必要はある?
コンクールによっては、申しこみのときに、歌う調や楽譜の版を書くように求められることがあります。要項や申しこみ用紙をよく見て、書く欄があれば、まちがえないように記入しましょう。
「キーを下げるのは、はずかしい?」と思ったら
キーを下げることを、「負けたような気がする」と感じる方もいるかもしれません。でも、自分の声に合った高さで歌うことは、とても大切なことです。
むりな高さで歌いつづけると、のどに負担がかかります。とくにお子様の声は、成長とともにかわっていきます。いまの声を大切にしながら、気持ちよく歌える高さをえらんであげてください。
歌ったあとに、のどの痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 移調とは、曲の形をかえずに、全体の高さを上げ下げすること
- コンクールで移調してもいいかは、要項によってちがう
- わからないときは、主催しているところに問い合わせる
- 声楽の歌曲は、高声用・中声用・低声用の楽譜が出ていることがある
- 高い音と低い音の両方を確かめて、早めにキーを決める
- 伴奏の方や音源も、同じキーにそろえる
声に合った高さで歌えると、曲のよさがもっと伝わります。好きな曲を、自分の声で歌ってみたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、いまの声のよさを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ