子どものころのコンクール受賞歴は役に立つ?「賞」より大切なもの
「コンクールで入賞しても、将来なにかの役に立つの?」
コンクールに時間やお金をかけていると、ふとそんなことを考える日もあると思います。この記事では、子どものころの受賞歴について、いろいろな考え方をお伝えします。
「受賞歴に意味はない」という声もある
プロの演奏家の世界では、小さなころのコンクールの受賞歴は、あまり重んじられないという意見もあります。オランダで活動するピアニストは、コンクールでは審査員全員に好まれる演奏が選ばれやすく、個性ゆたかな子どもが入賞しにくいこともある、と書いています。(現代ビジネスの記事)
つまり、「賞をたくさんとったから将来が約束される」というものではない、ということです。
それでも、役に立つところはある
目標になる
「このコンクールに出る」と決めると、練習に目標ができます。目標に向かってがんばる経験は、賞の有無に関係なく、お子様の力になります。
自信になる
「がんばったら認めてもらえた」という経験は、お子様の自信につながります。
学校などに伝えられることもある
コンクールによっては、学校などに出すための表彰証明書を発行しているところもあります。たとえば全日本こどもの歌教育協会では、内申書にそえるためなどの表彰証明書を発行しています。(全日本こどもの歌コンクール)
「賞」の重さは、コンクールによってちがう
ひとくちに「入賞」といっても、その中身はコンクールによってさまざまです。賞の名前だけを見て、くらべすぎないことも大切です。
- 出場する人数が多い大会もあれば、少ない大会もある
- 年れいや部門の分け方が、大会ごとにちがう
- 1位、2位のような順位の大会もあれば、「金賞」「銀賞」のように何人も選ばれる大会もある
- 予選、本選のように、いくつかの段階がある大会もある
ですから、「あの子は金賞、うちの子は銀賞」と、ほかのお子様とくらべることには、あまり意味がありません。くらべるなら、「去年のわが子」とくらべるほうが、ずっと多くのことが見えてきます。
気をつけたいこと
「賞をとること」が目的にならない
賞ばかりを追いかけると、「審査員に好かれる歌い方」ばかり練習するようになり、お子様らしさがだんだん見えなくなってしまうことがあります。
たくさん出すぎない
いくつものコンクールに続けて出ると、曲をじっくり育てる時間がなくなります。お金も時間もかかります。
結果でお子様をはからない
入賞したときだけほめると、「入賞しないと認めてもらえない」と感じてしまうことがあります。
息子は「1位をとりたい。1位の賞状とトロフィーがほしい」と言って、練習をつづけていました。1位をもらえた日は、涙を流してよろこび、わたしに「1位をとらせてくれてありがとう。がんばらせてくれてありがとう。歌をさせてくれてありがとう」と言ってくれました。
今、息子は「歌のコンクールは卒業する」と言って、コンクールには出ていません。それでも、コンクールに向けてがんばった日々や、1位をとって表彰された経験は、まちがいなく息子の人生の財産になっていると思います。
入賞したときの、親の受けとめ方
入賞はもちろんうれしいことです。いっしょに思いきりよろこんであげてください。そのうえで、つぎのことを心にとめておくと、賞がお子様の「次の一歩」につながりやすくなります。
- 賞そのものより、「ここまで練習したね」と、がんばった日々をほめる
- 「つぎも入賞してね」と、つぎの結果を約束させない
- 親せきやまわりの人に話すときも、お子様の前ではひかえめに
- 講評を読んで、よかったところと、つぎの課題をいっしょにたしかめる
入賞のあとに「つぎは落ちたらどうしよう」と不安になるお子様もいます。「結果はどうでも、あなたの歌が好きだよ」と伝えておくと、のびのびと次の曲に向かえます。
入賞しなかったときに、思い出してほしいこと
入賞しなかったからといって、その経験がむだになるわけではありません。本番までの練習、緊張の中で歌いきったこと、講評でもらったアドバイスは、すべてお子様の中にのこっています。
また、審査は、その日の数分間の歌を、その大会の基準で見たものです。お子様の歌のすべてを決めるものではありません。落ちた日の声かけについては、こちらにまとめています。コンクールで落ちた日に、親ができること。かけたいことば、さけたいことば
コンクールに出る前に、親子で話しておきたいこと
賞にふりまわされないためには、出る前の話しあいが大切です。結果が出てからではなく、練習をはじめるころに、つぎのことを話しておくとよいと思います。
- このコンクールで、いちばんがんばりたいことは何か(声、ことば、表情など)
- 結果がどうでも、本番が終わったら何をして楽しむか
- 講評をもらったら、いっしょに読もうね、という約束
目標を「入賞」だけにすると、結果が出なかったときに何ものこらないように感じてしまいます。「ことばをはっきり届ける」「さいごまで笑顔で歌う」など、自分の力でかなえられる目標をいっしょに決めておくと、どんな結果でも「できたこと」が見つかります。
受賞歴より役に立つ「記録」ののこし方
賞状は引き出しにしまったままになりがちですが、つぎのようなものをのこしておくと、あとで見返したときに、お子様の成長がよくわかります。
| のこしておくもの | 役に立つところ |
|---|---|
| 歌った曲と日付 | どんな曲を歌ってきたか、ふりかえれる |
| 本番や練習の動画 | 声や姿勢の変化を、自分の目でたしかめられる |
| 講評の紙 | ほめられたところ、課題が言葉でのこる |
| お子様のひとこと | そのときの気持ちを思い出せる |
ノートを1冊用意して、本番のたびに書きこむだけでも十分です。中学生、高校生になって、もう一度歌に向き合うとき、この記録がきっと支えになります。動画をネットにのせるときは、限定公開にするなど、お子様の安全にも気をつけてください。
賞より大切なもの
子どものころのコンクールでいちばんの宝物になるのは、賞状よりも、つぎのようなものだと思います。
- 目標に向かって練習した日々
- 審査員の講評でもらった「次の一歩」
- 緊張しながらも歌いきった経験
- 「歌うって楽しい」という気持ち
だからこそ、結果だけでなく、全員に講評が届くコンクールをえらぶことも大切です。こどもの歌声グランプリ
よくある質問
受賞歴は、たくさんあったほうがいいですか?
数が多いことより、一つひとつの本番で何を学んだかのほうが大切です。たくさんのコンクールに出ると、曲をじっくり育てる時間がへってしまうこともあります。お子様の様子を見ながら、えらんで出ることをおすすめします。
小さいころの賞は、大きくなったら忘れてしまいませんか?
賞の名前は忘れても、「がんばった」「人前で歌いきった」という経験は、体と心にのこります。記録をのこしておけば、あとからいっしょにふりかえることもできます。
本人が賞にこだわりすぎているときは?
賞をめざす気持ちは、悪いことではありません。ただ、結果ばかりを気にして歌うのが苦しそうなときは、「今日の練習で、いちばんよかったところはどこ?」と、結果ではないところに目を向ける声かけをしてみてください。
賞状やトロフィーは、どうしておけばいいですか?
かざっておくと、お子様のはげみになることもあります。いっぽうで、入賞しなかった兄弟がいるときや、お子様がはずかしがるときは、アルバムやファイルにしまっておく方法もあります。大切なのは、賞状の横に「どんな練習をしたか」の記録もいっしょにのこしておくことです。そうすると、賞状が「結果」ではなく「がんばった日々のしるし」になります。
まとめ
- 子どものころの受賞歴で、将来が約束されるわけではない
- それでも、目標や自信になり、学校に伝えられることもある
- 賞の重さはコンクールによってちがうので、ほかの子とくらべすぎない
- 賞が目的にならないように、結果でお子様をはからない
- 曲や講評、動画を記録にのこして、「去年のわが子」とくらべてみる
- いちばんの宝物は、練習した日々と「歌が好き」の気持ち
賞状は、がんばった日々の「おまけ」くらいに考えると、お子様も親も、もっと楽しくコンクールに向き合えると思います。